2 訴訟という選択肢のメリット、デメリット

(1)メリット

① 慰謝料等について裁判基準に基づいた賠償が得られる

 示談交渉段階だと自賠基準や任意保険基準で話が進んでいることは多いですし、仮に弁護士が介入して裁判基準での示談交渉を行っても、双方歩み寄るという示談の性質上、裁判基準満額での合意は難しいです。
 その点、訴訟での解決を選択した場合には、当然、慰謝料等の損害額の計算は裁判基準をベースとして行われますから、示談交渉よりも高い金額での解決を図ることができる可能性があります。

② 遅延損害金や弁護士費用が加算される

 交通事故について訴訟での解決を選択した場合、治療費や慰謝料等の損害とは別に、遅延損害金(事故日から支払い済みまで年5%)及び弁護士費用(損害額の10%程度)を請求することができます。
 特に、上位の後遺障害等級に該当している事案では、損害額の数%といっても馬鹿に出来ない金額になりますので、遅延損害金及び弁護士費用を請求できることは訴訟を選択するメリットの一つです。
 なお、訴訟上の和解での解決となった場合には、遅延損害金及び弁護士費用は損害として計上できないことあるので注意が必要です。

③ 相手方との合意は必要ない

 訴訟は、基本的には裁判官の判断である判決による解決を目指すものですから、相手方と合意があろうがなかろうが、被害者が賠償されるべき損害額が認定され、紛争を解決することができます。
 休業損害や代車費用等、保険会社と見解が対立しやすい損害についても訴訟によれば、終局的な解決を図ることができます。

(2)デメリット

① 他の手段より時間を要する

 交通事故についての訴訟の場合、多くは提訴より1年から2年程度で終了します(訴訟上の和解での解決となった場合は短縮される可能性あり)。
 治療期間も含めると訴訟での解決は事故から3年近くが経過してしまうことになります。
 このように他の2つの手段よりも解決まで時間を要することが訴訟を選択するデメリットになります。

② 手続きが複雑で費用も高い

 訴訟手続きは、他の2つの手段に比べて、裁判所という期間を介することになる分、手続きが複雑になります。
 書面を提出する、証拠を提出するといった一つの作業ごとに裁判所にはルールがあり、そのルールに乗っ取って、被害者が自らの損害を適切に立証していく作業は骨の折れるものです。
 また、費用についても、損害の額に応じてにはなりますが、訴訟の選択をする場合には、他の2つの手段より高額になります。

③ 賠償を得るために証拠による立証が必要となる

 示談交渉等とは異なり、訴訟手続きは、当事者双方が証拠による立証を行い、裁判所がそれに基づき判断をすることになります。
 そして、保険会社も、当該事故が訴訟に移行した場合には、当然代理人として弁護士を介入させて保険会社側に有利な主張を繰り広げてきます。
 不確定要素や争いの多い事案では、双方の弁護士の手腕や担当裁判官の個性、訴訟後に新たに判明した事情等による訴訟展開で、予期しない結果(示談段階より被害者に不利な結果)となる可能性があります。