交通事故で壊れた車を修理したものの、外観や機能に何らかの欠陥が残ったり、事故歴があるために商品価値が下がってしまったりと、修理後の車の価格が事故直前の車の価格よりも下がってしまうことがあります。この差額を評価損と言います。
 では、評価損はどのような場合に損害として認められるのでしょうか。

 裁判例は、初年度登録から事故時までの時間的経過の長短、事故時までの走行距離の長短、事故車両の車種(高級車か、希少か等)、損傷の部位・程度、修理の程度・金額、財団法人自動車査定協会の事故減価額証明書における査定等諸般の事情を総合考慮して判断しています。

 例えば、名古屋地方裁判所の平成22年7月9日判決(事件番号平成20(ワ)1041号)は、被害車両のトヨタ・アルフォードが、初年度登録から約3年半経過しており、走行距離も約4万4000キロメートルであったものの、

① 事故直前の時価が233万5000円(この時価は、❶同じ車種の新車の発売当時の価格が320万円、❷事故当時の小売価格が233万円であり、❸事故時の走行距離が約4万4000キロメートルであったこと、❹車検残月数が17か月であったこと、❺車両の状態が、特段価格を減殺すべき状態ではなかったことから、認定されました)で、かなり高額であること、
② 本件事故による損傷がかなり大きく基本的構造部分にも及んでおり、
③ 修理費用も192万7936円と高額であったこと

といった事情を考慮して、修理費の約1割である19万2794円を評価損として認めました。

 この裁判例のように、初年度登録からある程度年数が経っていたり、たくさんの距離を走っていた車でも、他の事情を考慮することで評価損が認められた事例は複数あります。

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