1.損害賠償金と税金について

 皆様、こんにちは。
 今日は、交通事故に遭った被害者の方が受け取る損害賠償金と税金の関係について取り上げたいと思います。
 交通事故に遭い、負傷した被害者の方は、基本的には、慰謝料等を含め一定額の賠償金を受け取って示談することとなります。
 では、この示談の際に受け取る金銭に対して税金の控除がなされてしまうのでしょうか?

2.税金の控除の可否について裁判所の考え方は?

 このような税金の控除の可否について問題となった裁判例としては、例えば、東京高裁昭和62年5月21日判決(交民20・3・588)、東京地裁昭和61年8月29日判決(交民19・4・1200)があります。

 どういう事案であったかというと、交通事故により死亡した被害者の方が、死亡時57歳の健康な男子で、東京都の赤坂で診療所を開業する内科の開業医で、年収が4082万円万余りの高額所得者であったのですが、加害者側が被害者の年収が上記のように極めて高額であったことに鑑み、所得税1604万円余り及び地方税535万円余りを上記年収額から控除して、残額1943万円余りを基礎として、逸失利益を計算すべきと主張したのです。

 しかし、東京高裁は、

「被害者が、その稼働によって取得した収入から、いつ、誰に、いくらの税金を納入するかは、専ら立法政策によって決められる被害者と課税権者との関係にとどまり、加害者とは関係のない事柄であるから、加害者としては、被害者がその稼働によって取得していた収入の全額を賠償しなければならないものとして、被害者が事故に遭遇しなければ取得していたであろう収入額を回復させるのが、損害賠償法の根本理念である原状の回復の観点から相当というべきであり、また、加害者が被害者の収入の全額を賠償したのち、被害者ないしその遺族が取得した損害賠償金に対して、課税がなされるか否かは、これまた立法政策によって決められる被害者らと課税権者との関係にすぎず、加害者の損害賠償額とは別個の事項というべきであるから、現行法において損害賠償金に対して課税されていないことから、損害賠償額の算定にあたって収入額から税額を控除すべきであるということはできないものというべきである。」

と判示して、税金の控除を否定しました。ただし、年収が高額であるために被害者が支出しあるいは負担すべき諸経費も少なくないと考えられ、また、家族に対して扶養や生活費援助の関係があったことなどから、被害者の年収から控除すべき生活費の割合は50%とされました。

3.法律上の損害賠償金の課税について

 では、法律上どのように規定されているかというと、損害賠償金の課税について、所得税法9条1項17号で

「保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含むし)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」

については所得税を課さないとしており、交通事故などのために、被害者が治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は、通常、非課税とされています。

4.損害賠償金についてはぜひ弁護士にご相談ください

 今回は、損害賠償額と税金の関係を取り上げました。
 交通事故による被害の程度等によっては、賠償金が高額になることもあり、税金のことだけでなく、賠償額の適正さなどさまざまなことが心配になると思います。そういった場合には、弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。