皆様こんにちは。弁護士の菊田です。

 本日は、評価損についての一般的な話をさせて頂きます。

交通事故によって自動車が損壊した場合、これを修理しても、車の外観に跡が残ったり、事故歴が残ったり等して、自動車の商品価値が下落してしまうことがあります。このような商品価値の下落を評価損といいます。

 評価損については、過去の裁判例をみても、必ずしもその賠償が認められてきたわけではありません。評価損の賠償が認められるか否かは、初度登録からの期間、走行距離、損傷の部位、車種等の事情から検討されます。このうち、損傷の部位は重要なポイントになると思います。当然ながら、損傷があってもそれが修理によって完全に修復可能なものであれば、評価損は認められにくくなりますし、逆に修理をしても外観に凹み等が残るような場合には、評価損は認められやすくなります。

 なお、こういった交換価値が問題になるケースとしては、ベンツ等の高級車が事故車両であるケースをイメージされるかもしれませんが、評価損はこのような高級車に限定して認められるわけではありません。実際に、過去の裁判例においては、事故車両がホンダ・オデッセイであるケースについて評価損の賠償を認めた例も存在します(東京地方裁判所平成10年12月9日判決)。

 また、認められる場合であっても、次に、どのように算定されるのかが問題となりますが、この点についても判例上定まった基準は現在のところありません。なお、評価損の賠償が認められた裁判例を見ると、修理費の2~3割程度を評価損として認めるケースが多いようです。

 なお、評価損の賠償を求めるときには、自動車ローンの支払状況にも注意しておく必要があります。自動車ローンを完済していない場合、当該自動車の所有権は売主であるディーラー等に留保されているケースが多いと思います。このような場合、自動車の価値を把握しているのは自動車の所有者なので、評価損による賠償を受けられるのは、事故の被害者ではなく、ディーラーになると思われます。

 以上のように、評価損については、考慮すべきポイントが多岐にわたるだけでなく、その賠償が認められるかどうかの判断には難しいものがあります。もし事故車両の価値下落につきお悩みの方がおられましたら、1度ご相談して頂ければと思います。