1.はじめに

 こんにちは、弁護士の辻です。

 弁護士を雇うと、いわゆる弁護士費用がかかります。これは、交通事故に関する示談交渉や、訴訟を弁護士に依頼した場合でも、当然かかります。
 これはもちろん、依頼人の方に支払っていただくのですが、加害者に損害賠償請求することにより、一部を負担させることができる場合があります。

 そこで、交通事故に関する弁護士費用の損害賠償請求について、お話ししたいと思います。

2.そもそも認められるのか

 弁護士に依頼せずとも、本人が訴訟や交渉をすることは可能であり、弁護士に依頼することは、本人の自由な選択によるため、相当因果関係がある損害とは捉えられず、損害賠償は認められないとも考えられます。

 しかし、最高裁昭和44年 2月27日判決によれば、

「わが国の現行法は弁護士強制主義を採ることなく、訴訟追行を本人が行なうか、弁護士を選任して行なうかの選択の余地が当事者に残されているのみならず、弁護士費用は訴訟費用に含まれていないのであるが、現在の訴訟はますます専門化された訴訟追行を当事者に対して要求する以上、一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近いのである。したがつて、相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」

とされています。

 不法行為に関する損害賠償請求について、本人が訴訟をすること自体は可能ですが、現実として、訴訟が複雑専門化されてきているために、訴訟せざるを得なくなったとしても、本人が訴訟をしたのでは、自身の権利を十分に保護できないことがありえます。そのような場合には、相当な範囲に限りますが、弁護士に依頼した費用も、不法行為との間に相当因果関係がある損害として認め、損害賠償請求を認めるという判断がされています。

 なお、交通事故であれば、あまり関係ありませんが、不法行為以外の訴訟では、弁護士費用を認めることについては裁判所は消極的です。

3.具体的にはいくらくらい認められるのか

 実際に支払った弁護士費用の全額を請求することが認められるわけではありません。上記判例が適示するように、「事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額」が認められるのであり、事案に応じて相当とされる額は様々です。また、示談交渉では弁護士費用の請求は認められないことが通常といってよいでしょう。

 ただ、交通事故の訴訟であれば、請求認容額の1割程度が相場でしょう。もちろん、事案に応じて、増減があります。

4.おわりに

 交通事故の被害者の方は、金銭によって賠償をうけます。そのため、賠償のために弁護士を雇い、その費用を支払った結果、手元にお金が残らなかったというのでは本末転倒です。
 弁護士に依頼する際には、弁護士費用がいくらかかるのか、きちんと説明を受けた後で、依頼することが重要です。