そもそも、物損事故については自賠責保険からの保険金が支払われないのですが、そのことを知らない方が少なくないのが実情です。不幸中の幸いで事故により怪我をした人がいなかったとしても、相手方当事者に生じた物的損害は何らの補償も受けることなく全額を加害者が負担しなければならないのです。
保険に加入していなかったことで被害者が納得できる金額を賠償できなければ、訴訟に発展してしまうことも稀ではありません。判決で相当額の支払いが命ぜられてしまうと、持ち家や銀行預金などはもちろん、給与なども差し押さえられてしまう可能性があり、そうなると、ただ交通事故を起こしたとの事実のみから破産に追い込まれてしまうことだって十分にあり得るわけです。
逆に、被害者側としては、仮に訴訟を提起しても十分に損害を填補してもらえなければ意味がないわけで、降って湧いた災難に泣くことになれば、とめどなく負の連鎖が続いてしまうことになります。
免許を取るときに、教習所で「任意保険には必ず加入しましょう」と言われたはずです。あれは単なる保険の営業なんかではなく、「何かあった時」に生じる様々な「想定外」に備えるための処方箋なのです。
日々交通事故案件に触れる我々としても、不用意な無保険車が一台でも減少することを心から願っています。