任意保険の特約の一つに対物超過修理特約というものがあるのをご存知でしょうか。

 古い自動車が事故によって大破したような場合、その自動車の時価額よりも高額の修理費が必要になることがあります。このような場合の自動車の修理費は、原則として、その自動車の時価額を限度にしか認められないというのが実務の運用となっています。

 思い入れのある大切な自動車が大破してしまったのに、修理費よりも低額な時価額しか払ってもらえないというのは、とても気の毒なものです。

 

 そのような事態に利用できる特約として、対物超過修理特約というものがあります。
 細部は個々の保険会社の約款により異なりますが、大筋では「時価額よりも修理費が高額となった場合、50万円を限度として修理費と時価額の差額を支払う」という特約となっています。
 この特約を利用すれば、長年乗り回した愛車を手放すという結果になることを防ぐ可能性が高まります。

 もっとも、この特約の利用にあたり何点か注意しなければならないことがあります。

 まず、この特約で支払われる金額は、時価額から超過した修理費の全額ではなく、修理費と時価額の差額に被保険者の過失割合を乗じた額になるということです。

 次に、この特約を利用するためには、実際に自動車の修理がされていることが必要です。また、保険会社によっては事故後6ヶ月以内に修理がされていることが条件となるようです。

 そして、なによりも問題なこととして、物損事故を起こした相手方の保険会社が、丁寧にこの特約が付されていることを被害者に教えてくれるのかという点です。

 このような特約の存在を知らなかったために、低額な時価額での示談をしてしまうということのないように、交通事故の被害に遭われた際には保険の知識を十分に持っている弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士 古関俊祐