1 はじめに

 皆様こんにちは。
 今日は、症状固定後の治療費について考えてみたいと思います。
 まずは、この「症状固定」という聞き慣れない言葉について少し説明しておきます。
 交通事故によって負傷し治療を続けた場合、すっかり元どおりまで回復(完治)するのが一番望ましいことではあるのですが、どうしても痛み等の症状が残ってしまうことがあります。このように、これ以上治療を継続しても症状の回復が見込めない状態になったことを「症状固定」と呼びます。

2 症状固定後の治療費

 治療費については、必要かつ相当な実費全額が損害として認められるのですが、症状固定となった後の治療費の賠償は原則として認められません。
 上記のように、「症状固定」が、これ以上治療を継続しても症状の回復が見込めない状態になったことをいうので、症状固定後も治療を続ける必要性や相当性が認められないとされています。
 もちろん、症状固定になった後も痛みを和らげる等のため通院することは自由ですが、基本的には被害者の方の自費での通院となってしまいます。

3 例外的に症状固定後の治療費の賠償が認められたケース

 しかし、例外的に、症状固定後の治療費もその支出が相当と認められる場合には賠償が認められることがあります。
 例えば、事故により両上肢不全麻痺(食事に際し介助が必要)及び両下肢完全麻痺等の後遺症を負った被害者について、入院中に症状固定となり転院を要請されたため、被害者の家族らが転院先を探したものの、適当な転院先が見つからなかったとして、自宅介護の体制が整って退院するまでの間、病院の了承を得て症状固定後も継続して133日入院した際の入院費用を認めた例があります(大阪地裁平成15年12月4日判決)。

 また、事故により四肢麻痺、意識障害等の後遺症を負った被害者について、意思疎通が困難であり、日常生活には全介助を要すること、食事は経管栄養によらざるを得なかったこと、体の拘縮を防ぐためにはリハビリテーションが欠かせない状態であったこと、在宅介護への移行のため、自宅の改修や看護師資格のない職業介護人ではできない導尿や経管栄養の技術を被害者の家族が習得する必要があったことなどから症状固定後も被害者の症状悪化を防ぐため、若しくは在宅介護へと移行する準備として、入院治療が必要であったとして、症状固定後の治療費468万円余りを認めた裁判例もあります(さいたま地裁平成21年2月25日判決)。

4 まとめ

 このように、症状固定後の治療費は基本的には認められませんが、例外的に賠償が認められることもあります。
 しかし、3で紹介したように症状固定後の治療費の賠償が認められるがどうかは、個々のケースを踏まえて支出の相当性があるかどうかを判断せざるを得ず、実際にその判断をすることは難しいと思います。
 そのため、症状固定後も治療を継続してその治療費の賠償を請求したいと考えられた場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。