1 はじめに

 警察庁の発表によると、平成26年の交通事故の発生件数は、57万3842件、死者数は4113人であり、いずれも近年は減少傾向にあります(平成16年の発生件数は95万2709件、死者数は7425人)。
 しかし、依然として相当数の死亡事故が発生していることは事実であり、減少の程度も緩やかになってきていることから、今後もさらに減少に向けて取り組んでいくべき問題であるといえます。

 そこで今回は、死亡事故が発生した場合の損害賠償がどのような形になるのか見ていきたいと思います。

2 損害賠償請求権?

(1) 交通事故で家族が死亡した場合、残された遺族は、多大な精神的苦痛を被ることになり、この点について加害者に対して損害賠償を請求することができます。
 それでは、その他には加害者に損害賠償を請求することはできないのでしょうか。
 損害賠償は、実際に発生した損害に対する填補を目的とするものであることから、どういった損害が発生しているのかという点が問題となります。

(2) 被害者が生前仕事に就いていた場合、事故に遭わなければ相当程度の収入を得ていたと考えられ、仮に事故当時に仕事に就いていなくても、将来的に仕事に就く可能性はあったといえる場合も多いです。
 このように被害者本人が仕事によって収入を得ていたとすれば、それによって家族が扶養されていたはずだ、ということが考えられます。
 そこで、このような損害の賠償も認められるべきということになります。

(3) 請求の仕方としては、①家族の被害者に扶養してもらう利益が侵害されたとして請求する方法と、②被害者本人について、死亡によって受け取るべき収入が受け取られなくなったという損害が発生し、それを遺族が相続したという方法が考えられます。
 ①よりも②の方が請求することができる金額としては大きくなること等から、一般的には②の構成をとることが多いといえます。

(4) その他に、被害者本人が事故によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料の相続が考えられますが、この点についても相続することができると考えられています。

3 おわりに

 交通事故の結果、被害者が死亡した場合、結果が重大である上に、被害者本人が生きて加害者に対して請求することができないこと、損害額の認定方法が将来の予測を含むものとなること等から、難しい問題が出てきます。
 このような場合、適切に損害の賠償を受けるために、一度専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。

弁護士 福留 謙悟