交通事故の示談交渉や訴訟において、しばしば重大な争点となるのが過失割合の問題です。事故が大きくなればなるほど、過失割合がわずかに変動するだけで、被害者にとっては受け取れる賠償金の額が増えることが期待でき、逆に加害者にとっては支払うべき賠償金の額を減らすことが期待できるからです。
また、事故に責任がないという思いが強い当事者においては、自分に過失割合が生じることそのものが納得いかないという場合も多いようです。
こうした過失割合の判断に大きな影響を与える要素の一つとして、自分の進行方向の対面信号の色が青であったか赤であったかという事情があります。
信号無視や見過ごしは、当然過失割合を加重させる要素となるからです。
しかし、当事者が真剣に信号の点灯色を争った場合、その立証は容易なことではありません。
近年は、タクシーなどはドライブレコーダーを搭載していることも多く、映像が鮮明な場合は、信号の色を判断しやすい場合もありますが、ドライブレコーダーの普及率はいまだ高いとは言えません。
それでは、ドライブレコーダー被登載車の事故において、信号の色はどのように証明され、判断されるのでしょうか。これが争われた一つの事例として、名古屋簡判平成26年12月1日を見てみましょう。
この訴訟で裁判所は、まず、事故現場の具体的な位置関係、構造等を詳細に認定した上で、事故の状況と車両の破損状況を認定しました。
次に、現場に到着する頃の被害車両の速度を、被害者が置かれていた客観的状況、及び被害者の供述などから推定しています。
また、事故現場である交差点の一隅にあるコンビニエンスストアの防犯カメラから正確な事故時間を認定し、さらに、警察の記録から信号機の点灯サイクルを調べて、これに前記の被害車両の推定速度から同車の秒速を算出して、交差点手前の停止線において、被害車両の対面信号が青色表示であったとの結論を導きました。
この件は、コンビニエンスストアの防犯カメラという客観的な証拠があったために、この程度の認定で済みましたが、それもない場合には、事案はさらに紛糾することとなります。
過失割合の主張には困難が伴うことが多いですので、事故に遭われて相手方から過失割合を主張され、お困りになられている方は、弁護士法人ALG&Associatesまでご相談ください。