こんにちは。今回は最高裁平成24年4月27日判決を紹介したいと思います。
事案は、被害者が自動車を運転中、加害者の運転する自動車に追突され、被害者には頚髄損傷による四肢麻痺の後遺障害が残ったというものです。加害者は無保険でしたが、被害者が事故当時加入していた自動車保険には無保険車傷害条項がありました。
無保険車傷害保険とは、加害車両が任意保険に加入していないため、被害者が加害者から損害賠償を受けることができない場合に、被害車両が加入している任意保険から、無保険車傷害条項に基づいて保険金を受け取ることができるというものです。多くの無保険車傷害保険は怪我をしただけでは支払われず、死亡または後遺障害が残った場合に限定されています。また、自賠責保険や任意保険では、損害賠償額に不足する場合に支払われる保険です。
事案の無保険車傷害条項には損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがなかったため、保険金の額に既に支払われていた自賠責保険金等をどのような形で充当し、保険金の額を算定すべきかが争われました。
保険金の額を算定するには、損害の額から自賠責保険金等を差し引くものとされています。そこで被害者の代理人は自賠責保険金等の額は、損害の元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額を指すべきであると主張しました。
最高裁は、被害者側の主張を退け、保険金の額は、損害の元本の額から、自賠責保険金等からの支払額の全額を差し引くことにより算定すべきであると判断しました。
なお、遅延損害金の利率については、年5分の割合と判断した原審に対し、最高裁は、保険契約は商人である保険会社との間で締結されていることから、保険金支払債務は商行為によって生じた債務(商法514条)に該当し、年6分とすべきと判断しています。