高齢化の進んでいる現代において、事業の承継を適切にはかることは、オーナー一族や会社にとって、重要な課題となっています。今回は、相続等を契機として、相続人から会社にとって望ましくない人物に株式が譲渡されることを防止する手段について検討していきます。

たとえば、家族経営の会社において、オーナー社長が死亡して相続が発生した場合、オーナー社長から相続人に株式が移動することになります。その後、相続人の一人が家族以外の者に株式を自由に譲渡できるとすると、譲受人が家族経営に非協力的な人であれば、株主の権利等を行使して、会社経営に反対するおそれがあります。場合によっては、過半数の株式を取得すること等によって、会社を乗っ取られる危険すら生じます。

この様な事態を防止するためには、株式の譲渡に制限を掛けておくことが重要といえます。すなわち、会社法では、会社にとって望ましくない人物に株式が渡るのを防止するために、株式の譲渡について制限をすることが認められています(会社法107条1項1号)。具体的には、ある株主がほかの誰かに株式を譲渡する場合は、株主総会あるいは取締役会の承認を得なければ譲渡することができないとすることができるのです。

株式の譲渡を制限するには、定款に「当社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない」という趣旨の規定が入っていることが必要です(株式の譲渡について承認をする機関について、株主総会ではなく、取締役会とすることも可能です)。

もっとも、新たに株式の全てについて譲渡制限を付す場合には、会社法上の手続として、株主総会の特殊決議が必要となります(会社法309条3項1号)。特殊決議とは、原則として、当該株主総会で議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う決議です。通常の株主総会による決議よりも成立要件が厳しい決議となりますので留意が必要です。

現在、事業の承継を考えている方は、御自分の会社の株式に譲渡制限がかかっているか否かを確認してみることをお勧めいたします。

株式の相続に関する事項のほか、事業承継全般についてお悩み事等ありましたら、お気軽に弁護士法人ALGにご相談ください。