1.前回の記事の概要

 前回の私の記事では、中小企業の経営者が後継者に経営権を承継させる方法として、大きく分けて①自社株を承継させる方法と②会社法制の活用により議決権を承継させる方法の2つがあること、さらに細かく分類すると、①自社株を承継させる方法には、「生前実現型」・「生前準備型」・「死後型」と3類型があるということをご紹介しました。
 前回は「死後型」の危険性について取り上げましたので、今回は「生前実現型」について解説致します。

2.「生前実現型」について

 

 (1)「生前実現型」とは、具体的には、先代の経営者が存命中に、後継者に対して、自社株を売買・生前贈与することによって経営権を承継させる方法のことです。
 まず、自社株を売買する方法によるメリットですが、当然のことながら、遺産分割の場合と異なり、経営を承継させたい後継者本人へ自社株を確実に譲ることができる点が挙げられます。また、売買の場合は相続税の負担が発生しないという費用面でのメリットもあります。

 (2)次に、自社株を売買する方法によるデメリットですが、売買の場合、後継者が譲渡株の対価や譲渡所得税を支払う必要が生じるので、後継者がその分の経済的負担を負うことになる点があげられます。現実問題として、後継者としたい方がこのような経済的負担に耐えられないために経営権を承継できないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。

 なお、この経済的負担を軽くするために、自社株の売却価格を安くするということも考えられますが、自社株の代金額が不相当に廉価である場合で、売主買主双方が非後継者等の遺留分権利者に損害を与えることを知っていたときには、遺留分減殺請求の対象となってしまいます(民法1039条)。自社株の売却価格を安く設定した方が後継者に承継しやすいのは言うまでもありませんが(ただ先代経営者の取得対価もその分安くなります。)、遺留分減殺請求されてしまえば、そもそも自社株を後継者に集中できなくなりますので、譲渡価格は適正なものにするよう気を付けてください。

 (3)また、先代経営者が譲渡対価に拘らないということであれば、売買ではなく生前贈与によって自社株を承継する方法をとることにメリットがあります。この方法によると、まず、売買の場合と同様に、承継させたい後継者本人に自社株を直接承継させることができ、後継者は、譲渡対価の経済的負担を負うこともなくなります。また、後継者が相続税よりも高額な贈与税の負担を負うことになる点には一応注意が必要ですが、この贈与税の負担についても、相続時精算課税制度・事業承継税制という事業承継を円滑にするための税法上の特例規定を使うことで、その負担を軽減することができますので、生前贈与によることが実質的には経済的負担が最も軽い承継方法であるといえるでしょう。  ただ、この方法による場合でも、遺留分減殺請求への対策を別途行わなければならないので、軽率に行うことは避けなければなりません。
 長くなってしまいましたので、遺留分減殺請求への対策方法については次回解説したいと思います。

3.まとめ

 当事務所には、相続・事業承継に関する問題を多数扱っている弁護士がおりますので、お気軽にご相談下さい。
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弁護士 森 惇一