1.はじめに

 一般の方の話を聞いていると、「うちは金持ちじゃないから相続では揉めない」「父母は元気だから、相続は当面関係ない」という話をよく耳にします。残念ながら、相続に関するトラブルは、被相続人が死亡し、相続が発生した後でのみ起こるわけではありませんし、特別お金持ちの方が亡くなった場合にのみ発生するわけでもありません。今回は、よくある相続発生前に起こる推定相続人による財産の使い込みについてご紹介します。なお、推定相続人とは、相続発生前の、将来相続人になる予定の人のことを言います。

2.使い込みとは

 被相続人が亡くなる前から、そのご子息の一人が高齢な被相続人に代わり生活費等の管理を引き受けている場合、将来相続財産になる被相続人の預金をその口座から引き出すこととなるかと思います。  この時、口座内のお金をあくまで被相続人の生活費等として必要かつ相当な額を費消している場合には問題ないのですが、往々にして、推定相続人が自己の利益のために引き出して過剰に費消したりする(いわゆる横領行為)ことがあります。これが、使い込みです。

3.対処方法

 (1)使い込みが相続開始前になされたのであれば、被相続人に無断で預金を下ろし費消したとして、被相続人がその者に不当利得返還請求(民法703条、704条)ないし不法行為による損害賠償請求(民法709条)をすることになるでしょう。
 また、相続が開始した後に使い込みが発覚した場合には、他の御子息等の法定相続人がこれらの権利を相続しますので、法定相続人によりこれらの請求が可能です。
 なお、相続開始前の使い込みは3年以上前の出来事であることが多いので、時効の問題があるとして、実際には不当利得返還請求で訴訟提起することのほうが多いでしょう。

 (2)以上の方法に対して、相続開始前の使い込みがある場合には、被相続人が死亡し、相続が発生した後に、費消された財産分を使い込んだ相続人の特別受益として遺産分割の際に控除することで、費消した相続人の取り分を減少させるという手法も考えられるところです。

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弁護士 森 惇一