相続時に被相続人の遺言が発見され、その遺言の内容において自身に対して一切又は、ほとんど財産がもらえない場合があります。
そのような場合でも、自身の「遺留分」を主張し一定の財産を取得する方法があります。
1 遺留分減殺請求権を行使できる者とその割合
遺留分減殺請求権を行使できる者は、①直系の尊属、②直系卑属、③配偶者などとなります。これらをまとめると、相続人のうち、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人が、遺留分減殺請求権を行使できることとなります。
そして、行使できる割合として、相続人が①だけの場合は、被相続人の財産の3分の1であり、それ以外の場合は被相続人の財産の2分の1となります。
2 遺留分減殺請求権の行使方法
遺留分減殺請求権の行使は、裁判上の請求による必要はなく、受贈者又は受遺者に対する意思表示があれば足りることとなります。
この点、遺留分を主張するために遺産分割協議申し立てようとした事案において、判例上、
「遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない。しかし、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合には、遺贈を受けなかった相続人が遺産の配分を求めるためには、法律上、遺留分減殺によるほかないのであるから、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である。」
とされています(最判平成10年6月11日最高裁判所民事判例集52巻4号1034頁)。
この判例は、遺言があったことを前提として、遺産の配分を求めた場合には、遺留分減殺請求権の行使があったということになります。
3 遺留分減殺請求権の行使できる期間
遺留分減殺請求権は、いつまでも行使できる権利ではなく、「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。」とされています(民法1042条)。
したがって、原則として1年間で権利行使ができなくなりますので、贈与又は遺贈の事実について無効を主張しているときは別論、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときは、早急に遺留分減殺請求権を主張する必要があります。
4 まとめ
遺留分は、相続人の権利として法律上必ず留保される性質ですので、遺産が全くもらえない又は著しく少ないという場合でも、あきらめずにまずは弁護士に相談することがよいと思います。
また、これから遺言を残そうと思っている人は、遺留分減殺請求権があることを前提として遺言を残すことが後々の紛争を回避できる方法となりますので、この場合にも弁護士に相談することがよいと思います。