当ブログは、いつもわりと深いテーマについての記事が多いですので、前回に引き続き今回も、相続が全く分からない方向けに基本的な知識をQ&A方式で解説致します。他の記事を読まれる前に、是非ご一読下さい。
 (前回の記事はこちら:はじめて学ぶ相続(前編)

Q5: 遺言書を作成したいのですが、どのように作成すればよいですか。

A: 遺言は、法律上3種類が定められており、その要式を満たすように作成する必要があります。法律上の要件を満たさない遺言書は無効となってしまうので注意が必要です。

(解説)
 民法上、遺言は ① 自筆証書遺言 ② 公正証書遺言 ③ 秘密証書遺言の3種類が規定されています。

 ① 自筆証書遺言は、遺言者が手書きで作成する遺言書のことです。その有効要件は、ⅰ全文が自筆であることⅱ日付・氏名が記入されていることⅲ押印がされていることです。

 ② 公正証書遺言は、公証役場で、証人(2人以上)および公証人の立ち合いの下で作成される遺言書です。公正証書遺言は、偽造された等と後々その有効性を争う余地がほとんどないことから、遺言書を作成されるのであれば、公正証書遺言を作成するのがよいでしょう。

 ③ 秘密証書遺言は、内容を秘密にして作成される遺言書です。これについても公証人や証人(2人以上)の立ち合いの下で、署名・押印をすることが必要になります。

Q6: 父は、遺言を残さず死亡しました。遺産としては、現金・土地・建物があるのですが、どのように分けるか相続人間で揉めています。どうすればよいでしょうか。

A: 弁護士に依頼し、家庭裁判所の遺産分割調停や審判の手続を利用すべきです。

(解説)
 相続人同士が、長年付き合いがない等で疎遠な場合、死亡した被相続人が有していた財産が、そもそもどのくらいあったのか、どのように分けるのかについて相続人間で争いになることが少なくありません。「もっと財産があるはずだ。」「私は父の介護をしたのだから、もっともらえるはずだ」等の主張が飛び交い、当事者間の話し合いだけでは収集がつかないケースも多いです。

 その場合は、弁護士に依頼し、家庭裁判所へ遺産分割調停の申し立てをしてもらうべきです。また、遺産分割審判の手続きを利用し、家庭裁判所に一定の解決基準を示してもらうことも検討すべきです。

Q7: 長女に全財産を相続させると書かれた遺言書が見つかったのですが、次女の私は何も相続できないのでしょうか。

A: そのような遺言があっても、一定の割合で相続する権利があります。

(解説)
民法は、相続人に対して、被相続人の生前処分や遺言によっても侵害されない最低限の財産の持分を認めています。この財産の持分のことを「遺留分」と言います。例えば、長女と次女の方のみが相続人であるとすれば、総財産の四分の一の割合が、次女の方の遺留分となります。すでに長女の方が全財産を確保している場合で、任意に譲って頂けない場合は、裁判で主張することになります。

 なお、この遺留分の請求は、相続開始があったことを知った日から1年以内もしくは相続開始から10年以内にする必要があります。

弁護士 森 惇一