②について、日付は、遺言書を書いた日を確定させる必要があるため、具体的に「何年何月何日」と記載しておく必要があります。「何年何月吉日」のような記載は日付を特定できないため、無効となります(最判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁)。
氏名については、通称であっても判例上は有効とされています(大判大正4年7月3日民録21輯1176頁)。
③について、印鑑による押印が通常ですが、拇印または指印による場合であっても有効な押印となります(最判平成元年2月16日民集43巻2号45頁)。自筆証書自体に押印はなかったとしても、封筒に封印しその封筒に押印してある場合には有効な押印となります(最判平成6年6月24日家月47巻3号60号)。
3 遺言の内容
遺言の内容は、社会的に妥当な範囲を超える場合には無効となります。何が社会的に妥当かはその時代の価値観にもよりますが、不倫相手に財産を相続させる場合、財産すべてを不倫相手に相続させるような不倫関係を維持する目的であったり、相続人の生活基盤を害する場合でなければ有効となることがあります(最判昭和61年11月20日40巻7号1167頁)。
4 まとめ
以上から、遺言者が書きそうにないような内容の遺言であっても、それ自体から直ちに無効となることはなく、遺言作成時に誰が書いたか、遺言者が遺言内容を理解できる状態であったか、社会的に妥当な内容であるか、などの事情から遺言の有効性を考える必要があります。
自筆証書遺言は、有効となる要件が厳しいため、遺言書に疑問を持たれた場合には弁護士に相談してみるのがよいと思います。また、ご自分で遺言書を作成しようと思う場合、思わぬところで無効とされかねないため、弁護士などの専門家への依頼が一番安全だと思います。