Q:自筆で遺言書を作成しようと思うのですが、かなりの長文となるため、書き損じてしまいそうです。もし書き間違ったときには、二重線で消せばいいのでしょうか。
 また、ワープロで書いて署名押印するだけではダメなのでしょうか。

A:自筆証書遺言の訂正・変更は、民法968条2項所定の方式の下に行う必要があります。

 訂正の場合で言えば、
①二重線で削除(原文が判読できるように)し、訂正を行い、
②訂正印(遺言書に押印した印章と同じもの)を押す他、
③遺言者が訂正場所を指示し、これを変更した旨の附記(「本遺言書▲行目中「■」を「□」と訂正した。」等、訂正箇所が)を附記し、さらに署名する必要があります。
 法定の方式によらない訂正・変更は、「効力がない」ものとされており、場合によっては遺言書全体の無効主張等、トラブルの元になりかねません。

 この点判例は、

「自筆証書中の証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については、たとえ同項(※民法968条2項)所定の方式の違背があつても遺言者の意思を確認するについて支障がないものであるから、右の方式違背は、遺言の効力に影響を及ぼすものではないと解するのが相当(最判昭和56年12月18日)」

と判示しており、裁判例もこれを引用するものが多くみられます。

 とはいえ、万一遺言書が無効とされてしまうと、せっかくの遺言書も意味がなく、また、そのとき遺言者は既に死亡しているでしょうから、取り返しがつきません。不安があれば全文書き直すほうが賢明です。

 なお、自筆証書遺言は、作成年月日の記載(平成27年10月“吉日”のように日付を欠くものは無効とされます)や、遺言者の署名押印の他、遺言者が全文自筆することが要件です。ワープロでの作成や代筆は「自筆」の要件を欠くため、無効とされます。

 どうしても全文自筆に自信がないという方は、公証人が関与する方式を検討すべきでしょう。秘密証書遺言では、ワープロ等印刷書面も使用することができます。もっとも、公証人が文面(遺言内容)の関与するものではないため、蓋を開けてみれば遺言要件を欠いていた等の事態も考えられます。
 手間と費用をかけ、公証人を利用するのであれば、公正証書遺言によるほうが、確実性の面はもちろん、検認不要となることからも優れているでしょう。