民法は、一般的な遺言の方式として、① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言を用意しており、このうちよく利用されているのが、① 公正証書遺言と、② 自筆証書遺言です。

 今回は、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらがよいのか、メリットデメリットを検討しながら考えてみます。

① 公正証書遺言

 メリットは、法律の専門家である公証人が関与するので方式の不備や内容が不明確なものとなるといった事態を避けることができます。また、原本を公証役場で預かってもらうので、遺言書を改ざんしたり、隠されたりする危険性を排除することができます。

 デメリットは、手間と費用が掛かることです。費用は、弁護士費用や司法書士の費用、公正証書をつくるための手数料を挙げることができます。また、遺言書の内容を秘密にすることはできないので、プライバシーにかかわることなど、書きにくいことでできます。

② 自筆証書遺言

 メリットは、簡単に作成でき、費用もかからないことです。また、他人に知られたくない事項を記載しても秘密にすることができます。

 デメリットは、遺言書の滅失、偽造、変造の可能性があること、遺言の知識がないと内容が不明確となったり、方式を欠いたりしてしまい、遺言者が期待した遺言の内容を実現できない危険性があることです。

 以上をみてみると、何を重視するかによって公正証書遺言か自筆証書遺言かを決めるべきといえます。将来相続人間で争いが起きないようにすることを重視するなら公正証書遺言、時間と費用の節約を重視するなら自筆証書遺言をお勧めします。

弁護士 江森 瑠美