弁護士法人ALG&Associates 大阪支部の弁護士の髙橋です。今回は、判例の紹介をしたいと思います。

斜線が引かれた遺言書をめぐる判例

 紹介する判例(最判平成27年11月20日民集69巻7号2021頁)は、遺言者が遺言書の文面全体に斜線を引いた場合には遺言書の破棄に該当するかという点に関する判例です。事案及び判旨の概要は以下のとおりです。

 遺言者Aが亡くなった後で金庫から遺言書が発見されましたが、遺言書の文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで斜線が引かれていました。AにはXとYの二名の相続人がいましたが、遺言書の内容はYに遺産の大半を相続させるというものでした。遺言書の内容に不満を持ったXは遺言書が無効であることの確認を求めて訴えを提起しました。

 地方裁判所と高等裁判所は、元の文字を判読できる程度の抹消は、遺言書の破棄(民法1024条前段)ではなく、遺言書の変更・訂正(968条2項)であり、一定の形式を備えない限り、元の文字が効力をもつことになるため、遺言書は有効であると判断しました。

 これに対し、最高裁判所は、「赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当である」「遺言書に故意に本件斜線を引く行為は、民法1024条前段所定の『故意に遺言書を破棄したとき』に該当するというべきであり、これによりAは本件遺言を撤回したものとみなされることになる」と判断しました。