皆様、こんにちは。

1.はじめに

 前回の当職のブログ記事(「死亡退職金の位置づけ(1)」)で、勤務先から遺族へ支給される死亡退職金は相続財産に当たらないケースがままみられる、とのお話をさせていただきました。

 今回は、その続きとして、遺族のどなたか一人が被相続人の死亡退職金を受け取ることになった場合、死亡退職金が相続財産にはあたらないと仮定しても、共同相続人間で何らかの調整すべきなのか?という点について、触れてまいります。

2.死亡退職金の持ち戻しに対する考え方

 共同相続人の間で調整すべきかというのは、共同相続人同士の不公平を少しでも解消するべきではないかという問題点といえます。この点、生命保険金に関する当職のブログ記事(「特別受益と生命保険金との関係」)でご紹介させていただいたような、死亡退職金を特別受益として取り扱って、相続財産ではない場合でも、具体的な相続分を決めるにあたって相続財産の中に含めて計算するか否かで、考え方が分かれております。

 一つは、死亡退職金が遺族の生活保障を目的としている制度である、という点を重視して、具体的な相続分の算出に際して特別受益として含めて扱ってしまうのは、上述した制度目的からかけ離れてしまうとして、持ち戻しを否定する考え方です。

 もう一つは、死亡退職金は亡くなった被相続人への功労報償的な性格を有する点を重視し、特別受益として持ち戻しの対象として扱う考え方です。

 この論点については、最高裁判所の判例は出ておらず、考え方は上述したとおり、まさに別れているといえるでしょう。おそらくは、個別に死亡退職金の規定を見て、遺族の生活保障を目的に掲げているのか、そうではない定め方になっているのか、中身を見ながら解釈を使い分けていくことになろうかと思います。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。