皆様、こんにちは。

1.はじめに

 お勤めになっている方が退職前に亡くなられてしまった場合、勤務先から死亡退職金という名称で遺族の方に金員が支給されることがあります。

 死亡退職金に関する規程に基づいて支給されるわけですが、受取人が遺族と指定されていることがあるため、相続財産にあたるのか否かが問題となります。

2.死亡退職金の相続財産該当性

(1) 最高裁判所は、幾つかのケースで、死亡退職金は相続財産に該当しない、という考え方を採っております。

 例えば、国家公務員法退職手当法が適用される特殊法人の職員が亡くなった時の死亡退職金のケースでは、

「受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なった定め方がされているというのであり、これによってみれば、右規程は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己の固有の権利として取得するものと解する」

と判断しています(最一小判昭和55年11月27日・民集34巻6号815頁)。

 つまり、死亡退職金の制度は、受給権者(=受取人のことです。)について民法の相続人の順位と異なった定め方をされていることや遺族の生活保障を目的とする、相続とは一線を画した制度になっているから、相続財産として扱うのではなくて、受取人となる人が個人的に持っている権利と扱いましょう、という考え方が明確されたのです。

 この最高裁判例からすると、国家公務員の死亡退職金も同様の扱いがなされるといえます。また、地方公務員についても同じ結論を取った最高裁判例が出ました(例;最二小判昭和58年10月14日・判タ532号131頁)。

 (2) 最高裁の理由づけからすると、死亡退職金の受給権者(受取人)の定め方が民法とだいぶ異なっている場合には、公務員ではなく私企業のケースでも、相続財産にはあたらないとの結論が出そうに思えます。
 ただ、私企業のケースについての最高裁判決は存在せず、死亡退職金の規程の中身によっては解釈の仕方が異なる余地があるため、注意は必要かと思います。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。