<質問>
私の父が亡くなりました。私の父にはさほど財産はありませんでしたが、土地を持っていたので登記を確認したところ、誰なのか分からない名前が記載してありました。親族に話を聞いたところ、父の父の父、つまり、曽祖父の名前であることが判明しました。

相続登記はどのように行えばいいでしょうか。

1.はじめに

相続は誰にでも起こり得る出来事ですが、その手続きは面倒だったりします。それもあって、手続きがなされず放置される例も見受けられます。特に田舎ではよくあることのようですが、相続をしても不動産登記の移転等を行わず、放置している間に次の相続が生じてしまったという場合、これを「数次相続」といいますが、さて、いざ相続登記をしよう!となった時に、ずっと昔の人の名前が残っている。この場合、どうやって登記を移せばよいのでしょうか。

本来は、そのようなことの無いように、相続が生じる毎にきちんと手続きをしておくことが一番なのですが、今回は、そうはいっても起きてしまった場合にどうすればいいのか、をご説明いたします。

2.一段階シンプルな場合を想定

まず、残っている登記が、祖父名義だった場合を考えてみましょう。私に兄弟が1人おり、父にも兄弟が1人と妻がいて、祖父にも妻がいる場合を考えてみましょう。

この場合に、①祖父が死亡し、その後、②父が死亡したとしましょう。

相続するのは、祖父が死亡した際に、祖父の妻に2分の1、叔父に4分の1、父に4分の1となります。その後、父が死亡するので、4分の1の2分の1である8分の1が母、8分の1の2分の1である16分の1ずつを、私と兄が相続します。

結局、祖父の妻、叔父、母、兄、私、が祖父の相続分を承継していることになりますので、これらの人間全員を含めて、遺産分割協議をすることが必要という事になります。

3.本件の場合

(1)上記2の場合と同様の処理

本件の場合も、法律的には、上記2の場合に、一段階追加で加わるに過ぎません。

したがって、法定相続人を把握し、その後、法定相続人全員で遺産分割協議をすることが必要です。遺産分割協議の結果、中間が単独相続となれば、一つの登記で移転可能です。ただ、本件の場合は中間の相続が二度あることになり、そのいずれもが単独相続である必要があります。この要件を満たす場合には、一つの申請で相続登記が認められ、そうではない場合には、相続ごとに登記を移転する必要があることになります。

(2)実際の処理方法

法律的には上記の通りなのですが、本件で死亡したのは曽祖父ということになると、関係者が膨大な人数になってしまいます。相続においてその相続人となる当事者が100人を超えることも少なくありません。

このような場合に、法定相続人全員で遺産分割協議といっても、全相続人を把握すること自体困難ですし、全相続人が集まって話し合いができるわけもなく、通常の方法では相続登記ができません。

そこで、相続人全員を相手に訴え提起するという方法をとることになります。その際、いきなり訴えを提起されては驚いてしまいますので、関係者全員に事前に文書を送付する等して、訴訟手続きを用いて同意を得ていくことになります。

これにより、判決を獲得し、「判決による登記」として、登記を移転することが可能となります。

弁護士 水野太樹