1 遺留分減殺請求って何?

 被相続人(亡くなった人)が一定の範囲を超えて贈与や遺贈を行った場合に、相続人が、その贈与や遺贈の効力を否定して、自らにそれらの財産や利益の帰属を確保する制度です。

2 遺留分の計算方法

 遺留分額の計算方法は、相続分の計算と異なるので注意が必要です。下記の事例に沿ってご案内します。

 死亡したAには、相続人である配偶者Bと、子CDがいました。Aは、死亡する3か月前に、愛人Eに5000万円相当の土地を贈与しました。Aが死亡したとき、Aに資産はなく、1000万円の借金が残っていました。BCDは、Eに対し、どれくらい請求できるのでしょうか。

⑴ 遺留分の割合

 割合については、法律で定められています(民法1028条)。

① 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
② その他の場合には、被相続人の財産の2分の1

【総体的遺留分(BCD全員の遺留分)】
 BCDは、①「直系尊属」ではないので、②「その他の場合」に該当します。よって、総体的遺留分は、財産の2分の1です。

【個別的遺留分(BCD各自の遺留分)】
 総体的遺留分に、各自の法定相続分(遺言の指定相続分は関係ありません)を乗じたものが、それぞれの個別的遺留分です。
 Bの法定相続分が2分の1、CDの法定相続分がそれぞれ4分の1です。よって、Bの個別的遺留分は4分の1(2分の1×2分の1)、CDの個別的遺留分はそれぞれ8分の1(2分の1×4分の1)となります。

⑵ 対象となる財産

 流出した財産の額が加算されます。ただ、被相続人の債務も考慮されるので注意が必要です。
 事例においては、計算対象の財産は、4000万円(5000万円-1000万円)です。

⑶ 各自の遺留分額

BCDの遺留分額は次のとおりです。
遺留分合計:4000万円×2分の1=2000万円
B:4000万円×4分の1=1000万円
C:4000万円×8分の1=500万円
D:4000万円×8分の1=500万円

⑷ 侵害額

法定相続分に従った場合、BCDの相続分は次のとおりです。
B:-500万円(法定相続分が2分の1)
C:-250万円(法定相続分が4分の1)
D:-250万円(法定相続分が4分の1)

法定相続分の額と先程計算したBCDの遺留分額の差額が、BCDの侵害額となります。
B:-1500万円(-500万円-1000万円=-1500万円)
C:-750万円(-250万円-500万円=-750万円)
D:-750万円(-250万円-500万円=-750万円)

 本事例のほかにも、遺留分の計算方法にはいくつか独自のルールがありますし、遺言が存在した場合にはまた別の問題が発生します。もしかしたら自分の遺留分が侵害されたかもしれない、とお考えの方は、ぜひ、専門家にご相談ください。

弁護士 江森 瑠美