こんにちは。
今日は、多くの人がやっている「子名義の預金」の相続における問題を考えてみましょう。

親の心としては、子のために、できるだけ財産を残してあげたい、という気持ちから、子名義で預金を作っています。しかし、たいてい、親は子に対して「あなたのために預金をしてあげているよ」という話はするものの、実際に親の存命中に、子にその預金の内容を知らせたり、通帳印鑑を子に渡して子に預金を管理させたりしていないのではないかと思います。親としても、子名義の財産について、「子のため」と言いつつ、自分のコントロール下に置いておきたいという気持ちはあるかもしれません。

そういう親だったのかどうかはわかりませんが、ある親が、子である被告に対して全財産を相続させる遺言を作成していたところ、法定相続人である他の子が原告となって被告に対して遺留分減殺請求をしたというケースがあります(東京地裁平成19年1月15日判決)。そしてこの遺言には、原告名義の預金も遺産として記載されていたため、被告が原告に対し、原告名義の預金も遺産なのかどうかを確認する反訴を提起しました。

そして原告としては、原告名義の預金は親から贈与された原告の固有の財産であると主張し、原告名義の預金全体の取得を目指しました。たしかに一見、原告名義の預金は、亡くなった親の名義ではないという形式的な側面からすると、遺産ではないようにも感じ、遺言に原告名義の預金が遺言に書かれているのが誤記ではないかとも思われます。

しかし、遺言をみれば、親は原告名義の預金も遺産として考えていたように感じます。また、遺言によれば親の全財産を取得できる被告としては、原告名義の預金も遺言どおりに遺産として取得したいというのが当然の気持ちでしょう。
判決は、原告名義の預金の出捐を行っていたのは亡くなった親であるという事実を認定し、この事実に基づいて、原告名義の預金も含んだ遺産を遺留分減殺の対象としました。
原告としては、原告名義の預金をまるまる取得できるかと期待していたかもしれませんが、本件では、結局、原告名義の預金分についても遺留分割合の6分の1(子3名が相続人だったため)しか取得できないことになりました。

親が亡くなった時点では、親の本心はどうだったのかはわかりません。あえて被告名義ではなく原告名義で預金していたことからすれば、3人の兄弟の中でもとくに原告に預金の形で財産をあげたいという気持ちがあったのかもしれないとも思います。
ただ言えるのは、子に確実に財産が渡るように子名義で預金をするなら、子に対して贈与したことが明確にわかるようにし(印鑑や通帳を子に管理させるなど)、間違っても遺言において遺産として記載しないようにすることです。