こんにちは。もう11月も半ば。早くも年末が目の前ですね。
今日は、相続に内縁の妻が絡んでくる場合にありそうなケースについてお話しします。

内縁関係、というのは、同居しているなど外観上夫婦関係があり、周りからも夫婦のように扱われている関係をいいます。不倫カップルもいれば、たんに法律上の婚姻ではなく事実婚を選んだカップルもいるでしょう。
いずれにせよ、そのような内縁関係がある場合、夫婦も同然ということもあり、多額の財産のやりとりをすることもありえます。例えば、不倫カップルの男性が女性に対して、住居として高額なマンションを購入してあげ、そこを不倫カップルの住まいとするような場合を考えればわかりやすいかもしれません。その男性の内心は、女性を離すまいとする意図なのかもしれませんが、それはさておき、これは法律的には男性の女性に対する贈与ということになります。

その後、男性が、本妻と死別か離婚か何かしらによって別れ、内縁の妻と再婚したとします。そしてさらにその後、男性が亡くなりました。
さて、この男性と本妻との間には子がいました。そうすると、男性の相続人は元内縁の妻の後妻と子、ということになります。子としては内縁の妻という後から出てきた人と父親の遺産を分けるなんて嫌、という気持ちとともに、内縁の妻さえいなければ父親の遺産はもっとあったはず、という思いにとらわれるかもしれません。そこで「あの高額なマンションをもらってるんだから、内縁の妻にわたる父親の遺産をできるだけ少なくしたい。」ということになります。

そこで出てくるのが「特別受益」という概念です。これは、相続人が、被相続人(亡くなった人)の生存中に、被相続人から特に財産的利益を得ていた場合に、その財産も「特別受益」として遺産総額の計算に含め(持戻し)、その分はすでに遺産をもらっていると考えて、遺産の取り分をその分減らすという考え方です。そうしないと、相続人間で不公平が生じるからです。
ただ、上記の内縁の妻の場合、マンションを贈与してもらったのは再婚前です。まだこのときは、男性の相続人の立場ではありませんでした。そういう時期にもらった贈与も、遺産の計算に含めなければならないのか、と内縁の妻は考えるでしょう。

内縁の妻の考えももっともなところもありますが、贈与の時期に関わらず、持戻すというのが多数派の考え方です。
結局、相続のとき(被相続人死亡時)に、相続人同士が公平に被相続人からの財産を公平に受け取っているか、と考えるべきだということではないでしょうか。もともと特別受益の趣旨は、「公平」ということですが、何が公平なのか、を考えるとこういう結論になるというのはおもしろいですね。