1 はじめに
今回は財産分与についてのお話です。テーマは寄与度です。
寄与度は財産分与の流れのどこに位置づけられるでしょうか。
財産分与では、まず、分与の対象となる財産を決めます。次に、その財産的価値を評価します。そうすると、財産分与の対象となる総財産額が計算されます。その後、どのような割合で財産を分配するかというのが寄与度の問題です。
2 原則
かつて、夫婦の収入差が少ない共稼ぎの場合は2分の1、主婦ならば4分の1から3割程度という時代もあったそうですが、その後家事労働の消極的評価への批判が生じるようになり、裁判でも原則平等とする裁判例が増加していきました。
平成八年二月二十六日に法制審議会総会で決定された「民法の一部を改正する法律案要綱」でも、「・・・当事者双方がその協力により財産を取得し、又は維持するについての各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。」と規定されています。
3 例外
原則があれば、例外があるのが世の常です。では、寄与度が平等ではないのはどのような場合でしょうか。
抽象的に言えば、配偶者の一方の特別な努力や才能によって高額な財産が形成されたことが明らかな場合にはこれに当たります。
裁判例では、夫が病院を開業し、著しく発展させ、個人としても1億円近い資産を所有していた事案で、「一審被告(夫)」が前示の如き多額の資産を有するに至ったのは、一審原告(妻)の協力もさることながら、一審被告(夫)の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるうえ、一審原告(妻)の別居後に取得された財産もかなりの額にのぼっているのであるから、これらの点を考慮すると財産分与の額の決定につき一審被告(夫)の財産の二分の一を基準とすることは妥当性を欠くものといわざるを得ず、一審原告(妻)の主張は採用できない。(括弧内は筆者)」と判示したものがあります(福岡高判昭和44年12月24日判例時報596号69頁)。
一方、妻が内職から始め、プロパンガス販売業を営むまで商売に努力し、その上、夫と別居後、独力で子ども二人を大学に進学させた一方、夫には、飲酒、暴力、女性問題が存在した上に、夫婦間の資産の構築にはさして貢献がない事案で、様々な事情を総合考慮した上で「・・・右原告(妻)の長期間忍従を強いられながら夫婦財産を構築してきたその尽力の程度、子の養育に捧げてきた費用等諸般の事情を考えるとき、右共有財産の合計金三、三八七万三、八〇五円は極めて大雑把な数字ではあるが、その七割方である金二、三七一万一、六六三円を原告(妻)に分与させるのが相当であると考える。(括弧内は筆者)」と妻の貢献を大きく評価した裁判例もあります(松山地裁西条支部判決昭和50年6月30日判例時報808号93頁)。