婚姻や離婚等、身分関係に変更が生じた場合、戸籍役場への届出が必要となります。そこで、今回は、この届出にまつわる事柄について、少し話してみようと思います。
まず、届出には、それがないと法的効力が発生しないものと、それがなくとも他の手続により法的効力自体は生じているものがあります。前者は、届出が実体的身分関係を創り出すという意味で創設的届出と呼ばれます。
後者は、何らかの手続により、戸籍法上の身分関係と実体的身分関係との間に齟齬が生じたときに、戸籍法上の身分関係を実体的身分関係に合致させるために行うもので、その両者のずれを戸籍役場に知らせる役割を果たす意味で報告的届出と呼ばれています。婚姻の届出(民法739条1項)や協議離婚の届出(民法763条・739条1項)は、いずれも届出があって初めて効力が生ずる創設的届出です。
もっとも、後者は、夫婦において、離婚の届出をしようという意思があれば足りる(最判昭和38年11月28日)のに対し、前者は、双方に社会通念上婚姻とみられる生活共同体を形成する意思がなければ、その効力が生じないとされています(最判昭和44年10月31日)。
他方、調停離婚(家事審判法21条)、審判離婚(家事審判法24条)、裁判離婚(民法770条)、訴訟上の和解離婚・請求認諾による離婚(人事訴訟法37条)等の場合の届出は、いずれも報告的届出にあたります。
これら報告的届出については、実体的効力が発生した日から10日以内に届け出ることが義務付けられおり(戸籍法77条1項・63条1項等)、これを怠ると過料の制裁が科されます(同法120条)。
それは、上述したように、報告的届出の場合、実体的身分関係と戸籍法上の身分関係が一致しない状態が生じているため、かかる状態が長く続くことのないよう、届出を怠った者に制裁を加えることで、早期に戸籍を実体的身分関係に合致させんとしたわけです。
なお、報告的届出と場合も、創設的届出の場合と同じ用紙(離婚届)を使いますが、証人の記載は不要ですし、届出人が自分の欄だけを埋めれば足り、相手方の署名捺印は不要です。
そして、届出義務者は、原則として申立人であり、申立人が届出をしないときのみ相手方とされています(戸籍法77条1項・63条)。
また、報告的届出の場合、実体的身分関係を生ぜしめたことを証する資料を添付しなければなりません。審判離婚や裁判離婚の場合は、審判書・判決書の正本又は謄本に加え、確定証明書が必要となります。
これに対し、調停離婚、訴訟上の和解離婚・請求認諾による離婚の場合は、調停調書・和解調書・請求認諾調書の正本又は謄本のみで足ります。それ以上、不服申立により争われる余地がないからです。
なお、上述した届出は、創設的届出であっても報告的届出であっても、本籍地以外の市町村に行う場合、戸籍謄本が必要となります。