猛暑ですね。事務所に通勤するだけでも汗だくです。
 さて、本日は面接交渉のお話をしたいと思います。

 面接交渉とは、別居している夫婦又は離婚した夫婦の間の子と、その子と別居している方の親が会うというものです。夫婦が別れても子供にとって親は大切、ということで、面接交渉は子の福祉のために認められる子供の権利です。ただ、他方で、別居したり離婚したりしていても、別居している親と子の親子関係が切れるわけではないので、面接交渉は、子と別居している親の権利でもあります。

 とはいえ、夫の暴力や暴言に耐えかねて、やっとのことで子を連れて逃げだしてきた妻にとっては、暴力夫が権利を振りかざして面接交渉を求めたとしても、素直に応じたくないでしょう。夫が妻の知らない所で子に暴力を振るうかもしれませんからね。

 この悩みについて解決を示す、次のような審判例(横浜家審平成14年1月16日)があります。

事案

 平成11年7月、妻が夫の不貞を疑って夫を問い詰めたところ、夫は、拳で妻の顔面を多数回殴るなどの暴行を加えました。その後も同年9月、11月の2回にわたり、夫は妻に暴力を振るい、妻は加療2ヶ月を要する肋骨骨折等の傷害を負いました。また、夫は、同年10月に、保育園でけんかをして泣いていた自分の子を突き飛ばし、子に全治4週間を要する上腕部骨折の傷害を負わせました。

 妻は、同年12月、子を連れて家を出て、夫と別居しました。
 その後、離婚訴訟により、子の親権者を妻として、離婚が成立しました。
 さらにその後、夫は妻に対して、面接交渉を求める審判を申し立てました。

審判

 この審判は、具体的に面接交渉を認めるか否かは、面接交渉が子の監護について必要か、子の利益の為に必要かという観点から決められるべきことであり、面接交渉を認めることが子の最上の利益にそうものであると認められない場合には、面接交渉を認めることはできない、としました。

 その上で、夫が妻に対し繰り返し骨折するほどの暴力をふるい、妻が夫に対し強い恐怖感を抱いていることや、子供も夫と接触したがっていないことなどから、面接交渉を認めることが子の最上の利益に合致するとは認められないとし、面接交渉の申立てを却下しました。

 このように、裁判所は、面接交渉を認めるか否かを、子の利益になるかどうかで判断しています。子を暴力夫に会わせることが子の利益になる場合なんて、ほとんど考えられませんね。

 それにしても不思議なのが、子に暴力をふるったり、暴言を吐いたりしている夫でも、調停では面接交渉を求めることがよくあるということです。しかし、前述のような審判例もあることですし、暴力夫の面接交渉の要望は、自信をもって断ってみましょう。