皆様、こんにちは。

1 イントロ

 前々回の私の記事で、裁判所が親権の判断に際し、どのような点を見るのかについてお話しさせていただきました。

 今回は、裁判所の中で最も親子関係を目の当たりする方、すなわち家庭裁判所調査官がどのように親子関係を調査するのかについてお話しいたします。

2 調査命令

 離婚訴訟に至った場合、裁判所は親権者を指定することになります。その際、調査官に調査を命じ、その報告内容を親権者指定の判断材料とすることができます。

 裁判官が調査官に命じる調査事項としては、お子様の監護状況の調査、お子様が誰と一緒に暮らしたいか等の意向調査、どちらの親が親権者として適格かという適格性の調査が挙げられます。

 ここで指摘できる特徴は、専ら現在の状況を調査する点でしょうか。調査官も事件の全体像を把握するために過去の事情は当然調べます。ただ、調べた内容そのものは、お子さんの現状はどうなのかという分析に向かっていくので、過去の一事情に拘泥することは得策ではありません。

極端な例ですが、お子さんを監護している側の親が過去に不貞行為を行っていたとしても、現在きちんとお子さんを監護しているのであれば、親権者に指定される可能性は十分にあります。

3 調査内容

 (1)調査官の活動の特徴は現地調査を行う点です。裁判所といえば通常当事者が赴かなければならないので、腰が重たいイメージがあります。ところが、調査官は家庭訪問や幼稚園・保育園・学校等を訪問します。お子さんの今の環境を把握したいので実際に現場を見て、話を聞き取って報告内容をまとめていくのです。

 よくある進め方としては、まず親である当事者に裁判所へ出席していただいて調査官との顔合わせや面接日程等の調整をします。

 そして、打ち合わせに基づいて、裁判所で調査官との面接を行ったり、調査官が家庭訪問、幼稚園・学校訪問を行います。家庭訪問の中に含まれることが多いですが、お子さんとの1対1の面接も行います。

 (2)親との面接では、事前に双方の主張や過去から現在に至るまでの監護状況に関する書面を提出することが多いので、提出した書面の内容に基づいて調査官から質問を受けることになるでしょう。お子さんとの1日の生活スケジュール、家事・育児等の分担内容、今後の監護方針等かなり踏み込んだ内容を聞かれます。おそらく説明する内容は書面と重複します。もっとも、中にはご本人から直接確認したいと考えている調査官もいますので、ご自身の言葉で説明できる方が調査官の印象は良いでしょう。

 そして、お子様と同居している親に対しては家庭訪問が実施されます。同居のご家族全員がいらっしゃるタイミングで行われます。

 調査官には家族がいる前でのお子様の様子やお子様がおもちゃ等で遊んでいる様子等を見てもらいます。このとき弁護士は同席しないので、ご本人方で対応しなければなりません。

 また、訪問の中で調査官とお子様だけでお話しをする機会が設けられます。お子様に対して「どっちの親がいいの?」等とあからさまな質問はしませんが、調査官はお子様のお気持ちを探っていきます。調査官が何を聞くのかはその時になってみないとわかりませんので、親としては事前にどこまで説明すべきか悩ましいと思います。

4 調査報告書の作成

 調査官は一通りの調査を終えると小見出しのとおり調査報告書を作成します。当事者の双方の言い分や家庭訪問等により得られた見聞の内容がまとめられています。

 さらに調査官は調査の結果を踏まえて意見を記載することができます。この意見とは、現在の監護状況がお子様の福祉に沿うものであるか否かの評価を指し、裁判官の判断にも影響を及ぼします。あくまで調査官の「意見」なので裁判官はそれと異なる判断を下すことは可能です。しかし、調査自体が裁判官と調査官との間で打ち合わせしながら進められていくので、意見の内容も含めて親権の行く末を決める重要な位置づけにあることは確かだといえます。

5 最後に

 親権を争う場合、お子さんと同居している側が有利と言われますが、同居している方はこれまで述べたような調査官の調査を乗り越えなければなりません。「百聞は一見に如かず」と言われるように、実際に見てわかることがあります。無理に取り繕っても矛盾が生じるとかえって悪印象を残すことにもなりかねません。月並みですが普段から衣食住を中心にお子様の生活環境を整えることが最も大切なことでしょう。その上でお子さんが礼節を知ってくれたならば言うことはありませんね。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。