1 はじめに

 弊所では「夫が浮気をしたので慰謝料をとりたい。」というような不貞慰謝料請求のご相談を数多く受けていますが、その際、慰謝料のほか、夫の浮気相手を特定するのに要した探偵業者の費用も請求したいというご要望もよく頂きます。

 そこで、今回は、不貞相手に対する探偵費用の請求は認められるのかご説明したいと思います。

2 認められる場合

 結論から言いますと、不貞行為の存在を立証するために必要な調査である場合には、それに要した探偵費用も損害として請求できるとするのが裁判例の傾向のようです(東京地判平成20年12月26日、東京地判平成22年 7月28日)。

 両裁判例の事案では、いずれも、業者による調査がなければ、配偶者の不貞相手方が誰なのかすら不明であり、調査により初めて被告の不貞内容が明らかになっています。

3 認められない場合

 これに対し、探偵費用が認められなかった事案は、調査前にすでに不貞相手が発覚していたり、不貞相手が不貞行為を自白していたりした場合であり、費用をかけてまで調査せずとも、不貞行為の存在を立証することができた事案(東京地判平成22年 2月23日、 東京地判平成22年12月21日)といえ、いずれも不貞の立証のために調査の必要性がなかった(乏しかった)ことが認定されています。

4 認められるのは「相当」な金額のみ

 以上のように、不貞相手に対する探偵費用の請求が認められる基準としては、不貞行為の存在を立証するために必要な調査かどうかというのが概ねの基準となると言えます。

 ただし、立証のために必要な調査であったとしても、必ずしも探偵費用全額が認められているわけではなく、認められるのは「相当」な金額のみです。どこまでが「相当」なのかは、まさにケースバイケースですが、たとえば、料金が著しく高額な業者等を使った場合等では、平均的な料金の範囲内の金額につき「相当」として、この限度で請求が認められる可能性が高いのではないかと思われます。

弁護士 森 惇一