渉外離婚とは、一方もしくは双方の国籍が日本以外にあるご夫婦の離婚を意味します。このようなご夫婦が裁判で離婚を争う場合、どこの国の裁判所で行うことになるでしょうか。

 日本には、渉外家事事件の国際裁判管轄に関する明文の規定がなく、判例によって判断せざるを得ません。

 例えば、もともと日本人だった妻が、海外において朝鮮人(韓国人)の夫と婚姻したものの、その生活習慣などに馴染めず、事実上の離婚の承諾を得て日本へ帰国後に離婚を求めて訴訟を起こしたというい事案において、最高裁判所は、原則として、被告の住所地を管轄地とすべきであるものの、原告が遺棄された場合や被告が行方不明の場合その他これに準ずる場合においてもいたずらにこの原則に膠着し、被告の住所が我が国になければ、原告の住所が我が国に存しても、なお、我が国に離婚の国際管轄が認められないとすることは、我が国に住所を有する外国人で、我が国の法律によっても離婚の請求権を有すべき者の身分関係に十分な保護を与えないことになり、国際私法生活における正義公平の理念にもとる結果を招来するとして、日本の裁判所に管轄を認めました。

 この事件では、被告は、一度も来日したこともなく、日本に最後の住所地があるとすることもできず、被告の住所地を管轄する裁判所へ訴えを提起することが原則となるものの、原告が日本へ戻ってきたあと一度も被告から音信がなく、その所在も不明であることから、原告の住所地のある日本の裁判所に管轄を認めています。
 (最高裁大法廷昭和39年3月25日判決)