将来の退職金がどのように分与されるのかについて、少し説明したいと思います。
退職金は、賃金の後払い的性格を有しているとされ、婚姻後別居までの期間に相当する部分が財産分与の対象となると考えられています。ただし、将来の受給という不確定要素があることから、退職金を受け取れる蓋然性が高い場合でなければ、分与の対象とはなりません。
ところで、財産分与の対象とされても、将来の退職金をどのように評価するかについては諸説あります。
① 別居時に自己都合退職した場合の退職金相当額を考慮する(婚姻前労働分は差し引く)
② 定年退職時の退職金から、別居後労働分(及び婚姻前労働分)を差し引き、中間利息を控除して口頭弁論終結時(審判時)の原価を算出して算定する。
裁判例では、①の考えに立っているものが多いようです。
一方、定年退職が比較的近い将来訪れるような場合には、②のように、定年退職時の退職金額を基準として算定される例も少なくありません。
とりわけ、代理人を立てずに離婚の交渉を行う場合には、将来の退職金を財産分与の対象とし忘れることもあり得ますので、どうぞお気を付け下さい。
弁護士 吉田公紀