離婚時に、夫婦の一方、あるいは双方の退職金がすでに支払われている場合、 財産分与の対象となります。

 この場合、退職金を単純に折半するべきなのかどうかが問題となりますが、この点につき横浜家庭裁判所平成13年12月26日審判(家月54巻7号64頁)は、退職金算定の対象である分与側の全勤務期間中における同居期間の割合分の額を分与の対象とし、同額を折半すべきとしています。

 この審判例には、「夫婦が婚姻中に協力して蓄財した財産の清算」としての財産分与の性格が強く表れていると思われます。

 ところで、離婚時に未だ退職金の支払いがなされていない場合、その退職金が財産分与の対象となるかは問題となり得ます。分与側が会社に勤務しており、当該会社の就業規則や賃金規程で退職金の支払対象となる社員であるなら、退職金を未だ支払われない勤務期間中であっても、抽象的に退職金に対する期待があるとは考えられます。だとすると、被分与側からはそれを半分あるいは相当程度分与してもらいたいとの主張が出て来ます。

 しかし、支払前の段階においては、退職金は将来取得するものであり、退職時の会社の経営状態や退職理由によって支給の有無及び額が左右される可能性があります。また、多くの場合には在籍期間でも退職金の額は変わります。不確定な要素が多すぎるために、清算の対象とはならないとの考え方もあります。

 裁判例では、退職金取得の蓋然性がどの程度認められるかでそもそも清算の対象とすべきか否かを判断する例がありましたが、名古屋高裁平成12年12月20日判決(判タ1095号233頁)は離婚時を任意退職時とした場合の額をベースとし、支給対象となる勤務期間に対する同居期間の割合と寄与率を乗じて、分与額を算定すべきとしています。なお、分与それ自体は、分与側が実際に退職金を受給したときに支払うべきとしています。

 将来の退職金であっても財産分与の対象となると判断されても、そこから先の問題である具体的な分与額の算定、支払時期などについては、裁判例ごとに様々な処理を行っています。

 同居期間に応じた離婚時任意退職金額に寄与率を乗じるもの、離婚時任意退職金額から所得税等を控除して同じ計算を行うもの、離婚時に退職金の分与分の支払いを命じる代わりに中間利息の控除を行うものなどが、処理方法としてあるようです。