婚約とは、将来婚姻することを約する契約です。合意の内容には、将来夫婦として共同生活を営む意思と、将来婚姻の届出をなす意思が含まれていることが必要です。特に一定の儀式が必要というわけではありません。
婚約が成立すると、当事者には、誠実に交際し、婚姻を成立させるように努める義務が生じます。ただ、義務といっても、強制的に正式な婚姻を成立させることはできません。正当事由なく婚約を破棄した場合には、相手方に対して損害賠償請求をすることができます。
では正当事由がない場合とはいかなる場合をいうのでしょうか。
相手方から暴力行為があったり、相手方が他の異性と肉体関係を結んだりしたら、他方当事者は、婚約を破棄したとしても違法とはなりません。
一方、家族が婚姻に反対しているとか、家風が合わないとかでは正当事由が認められない可能性が高いです。確かに、相手方の親に婚姻を反対されたことで、相手方から「親に反対されたからやっぱり結婚できません」と言われてしまったら納得できませんよね。
ですので、こんなことを言われて婚約を破棄されたら、相手方に対して損害賠償請求をすることを考えてみてはいかがでしょうか。
具体的に賠償額がいくらになるかはケースバイケースです。
婚約期間、交際の状況、周囲への周知の有無、結婚へ向けての具体的準備の程度、婚約破棄の事情等が考慮されます。裁判例をみると、30万円程度のものもあれば、200万円を超すものもみられます。
上記の考慮要素に従って例をあげれば、比較的長く交際しているカップルで、婚約したことを会社の人、友人、家族等に一通り知らせて、結婚式を挙げ、夫婦で生活するための新居を契約したのにもかかわらず、いざ入籍をする直前になって、相手方が他の異性のところへ行ってしまい「やっぱり結婚できませ~ん」なんて婚約を破棄されたら、賠償額は高額となる可能性があるでしょう。
弁護士 吉田公紀