大阪地裁が、今年の3月に大変興味深い判決を出しております。

 報道では、「プラトニック不倫」と名付けられているようです。

 これは、夫と密接な関係になり精神的苦痛を受けたとして、妻が夫の会社の同僚女性に220万円の損害賠償を請求した事件です。

 220万円という金額から、慰謝料200万円、弁護士費用相当額20万円(慰謝料の10%相当額)という内訳だと思われます。

 不貞行為があった場合、配偶者への慰謝料請求は、500万円前後が相場だと言われていますが、不貞行為の相手方に対する請求は、200万円から300万円の範囲が多いと思います。

 ところが、今回、大阪地裁が命じたのは、44万円の支払です。

 不貞行為に対する慰謝料請求としては低額です。どんなロジックなのか…。

 冒頭の表題から推測できるように、肉体関係がなかったことを認定した上での損害賠償なのです。

 裁判所は、夫と同僚女性との間に、「肉体関係があったとは認められない」としました。

 しかしながら、夫のほうから同僚女性に何度も肉体関係を迫ったことがあったことは事実だったようで、裁判所もそのように認定しています。

 このことから、2人が単なる同僚の関係を越え、”怪しい関係”であったことはうなづけると思います。

 ところが、男性の誘いを巧みにかわし、その同僚女性は、”一線を越えないように”貞操を守ったようです。
 裁判ではそのような事実認定になっております。

 同僚女性もその男性に好意を寄せていたことは認めていたそうです。

 このような”プラトニックな男女関係”に対しても、大阪地裁は、損害賠償を認めました。

 さて、この場合の妻の損害は何だったのでしょうか?

 それは、裁判が認定した事実によると、夫の妻(原告)に対する”冷たい態度”だそうです。

 要するに、夫は他の女性に気持ちが入ってしまっていて、妻に冷たくなってしまっていた、ということなんですね。

 勝手にその男性が同僚女性に入れ込んでいるだけなら慰謝料を支払わされるいわれはないのですが、肉体関係を拒み続けたとはいえ、その女性が夫と特別な関係を築いたことと、原告である妻の損害(夫の冷たい態度)との間には因果関係がある、という評価になりました。

 さて、この判例が定着するのかどうかは分かりませんが、ここから得られるimplication。

 肉体関係がない場合でも、プラトニックな恋愛関係が認定されれば、損害賠償義務を負うことがある、ということ。

 次に、損害賠償額は、今回では44万円しか認められなかったが、それよりも高額となる可能性も秘めていること。

 前者はわかりやすいと思います。問題は後者です。

 今回の事件で裁判所が認定した事実って、「夫の妻に対する冷たい態度」なんです。原告の女性には失礼かもしれませんが、その程度なんですね。

 でも、男が妻以外に女性に入れ込んでいる場合、そのしわ寄せがどの程度家庭生活に影響するかはケースバイケースです。

 ”冷たい態度”ならまだしも、例えば、外泊が多くなったり、頻繁なデートで家庭を顧みなくなったり…。不倫相手へのプレゼントが重なれば、家計への経済的損害も与えうるでしょう。そのような関係が続いた期間も争点になり得ます。このように、妻の被る損害の深刻さって、様々なレベルがあり得ます。

 その損害の深刻さの程度如何によっては、44万円を優に越えることも十分あり得るのではないか、というのが私の感想です。