先月5日のblog「離婚と税金(1)」で見た通り、離婚関係で当事者間のお金が動く根拠は、大まかに分けると①財産分与、②慰謝料、③婚費ないし養育費です。今回扱うのは、②慰謝料です。
 (「離婚と税金(1)」の記事はこちら。)

 慰謝料というのは精神的損害に対する賠償金のことで、平たく言うと、不法行為によって心を傷つけられたことに対するお詫びのお金です。

 慰謝料を、お金そのものや金銭債権の形で受け取る場合には、「損害賠償金で、心身に加えられた損害に起因して取得するもの」として、所得税が課税されません(所得税法9条1項17号後段、同法施行令30条)。渡す側にも、贈与税等は課税されません。

 もちろん、慰謝料という名前で渡せばすべてのお金が非課税になるわけではなく、客観的に生じた損害を回復するのに必要だった分(つまり、慰謝料として相当な額)以上のお金は課税対象となり得ますのでご注意を(参考:マンション建設承諾料事件/大坂地裁昭和54年5月31日判決行集30巻5号1077頁)。

 慰謝料を、株券やマンションの譲渡など、金銭以外の資産の譲渡によって清算する場合、受け取る側についてはお金や金銭債権と同様、原則として課税されません。付け加えるとすれば、不動産を受け取った場合には、不動産取得税と移転登記の際の登録免許税、取得後保有期間中の固定資産税がかかりますが、これは離婚給付の場合でなくても同様ですね。

 渡す側については、なんと譲渡所得課税がかかる場合があり得ます。ただ、居住用不動産、ようするに今まで住んでいた家や土地を譲渡する場合には、離婚届が受理された後に渡すことで譲渡所得税の特別控除を利用できます。

 ただし、慰謝料をやり取りしなければならないような、夫婦二人にとって大きい出来事があったとしても、それが必ず離婚につながるとは限りません(実際に、国税不服審判所採決昭和49年2月27日裁事No.7.49頁は、夫がほかの女性と長年不貞・同棲状態にありましたが離婚はしていなかったというケースです。)。これから二人の関係を新しく築き直すための契機として慰謝料を、という場合もあり得ます。

 離婚をせずに婚姻中に慰謝料をやり取りする場合、上の裁決事例が示すように、渡す側に贈与税が課税される場合があります。