こんにちは。今日は、同居義務についてお話します。
 最近、大物野球選手の海外移籍が決定し、可愛い奥様が「どこでもついていくつもりでした。」とブログに記載したことが話題になっていましたね。

 そこで、夫婦なんだから、妻が夫の転勤についていって、同居するのは当たり前じゃないか?と疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。

 夫婦の同居については、民法752条に「夫婦は同居し、互いに協力しなければならない。」と明確に定められています。つまり、夫婦の同居とは民法上の義務なんですね。

 そこで、理由もなく同居を拒む相手には、家庭裁判所で『同居を求める調停』なども起こすことができます(ただし、嫌がる相手を引っ張ってきて同居を強制し、家の中に監禁するわけにはいきませんので、強制力はありません)。

 また、理由もなく同居を拒み続けた場合には、「悪意の遺棄」にあたるとして、同居の拒否という事実が夫婦の離婚事由となる可能性もあります。

 それでは、妻が夫に愛想を尽かし、離婚を決意して子供を連れて出て行った場合に、「同居義務違反」「悪意の遺棄」といって責められるのか?

 この場合には、何らかの愛想を尽かす理由があって(不貞、浪費、暴力暴言など)、離婚を決意して別居を開始したわけですから、「理由もなく」同居していないわけではなく、「正当な理由があって同居していない」ことになります。

 離婚の相談を受けていると、これまでDV,モラハラなどの支配関係があったような夫婦の場合、支配されていた側は心理的束縛や恐怖からなかなか別居に踏み切れず、別居をすると責められるのではないか、勝手に出てきたら怒られるのではないか、勝手に出て行ったということで、生活費をもらえないんじゃないか、と心配している方が多いように思います。

 多くの場合、別居には正当な理由があります。
 別居をしてはじめて、これまでの生活や関係性が異常だったことに気づいたりもします。
 同居義務違反なんて言葉や概念を怖がることなく、行動を起こして前に進むことも時には重要ですよね。

弁護士 井上真理