こんにちは。今回も、前回に引き続き、婚姻費用と生活保護にからんだお話しをしようと思います。
 (前回の記事はこちら:生活保護と婚姻費用

 前回も少し触れましたが、婚姻費用は、生活保護の支給額決定の基礎となる、受給者の収入のひとつとして考えられています。そのため、生活保護受給者が婚姻費用を得ている場合は、役所に対し、婚姻費用の支払いを受けていることを知らせなければなりません。

 通常、婚姻費用は、毎月、婚姻費用支払い義務者から支払われる場合、振込の方法をとります。そして、生活保護受給者は、預金口座を役所にチェックされていますから、多くの場合、預金口座の履歴から、婚姻費用の支払いを客観的に把握することができます。こういう場合であれば、婚姻費用の支払いを受けていることをわざわざ自分で役所に知らせなくても、いずれは、役所が婚姻費用の支払いを確認することができます。

 しかし、もしも、生活保護受給者名義以外の口座に振り込まれたり、現金手渡しの方法をとったりすれば、これらを役所がチェックする機会はありませんから、役所が婚姻費用の支払いに気付く機会がなくなる可能性があります。

 婚姻費用の支払方法について、役所も法律も、特に指定しているわけではありません。しかし、生活保護受給者が婚姻費用の支払いを受ける場合の振込先について、複数の役所に問い合わせたところ、「婚姻費用の振込先は、生活保護受給者の口座にすべき。」との回答がありました。あえて受給者名義以外の口座に振り込むなら、別の口座に振り込むということと、その理由を役所に説明してほしい、とのことでした。

 昨今、生活保護の不正受給が問題となっており、あえて受給者以外の口座に婚姻費用を振り込み、かつ、役所に対する説明もないとなると、収入隠しして生活保護を不正受給する目的があると疑われるおそれもあります。どうしても、受給者名義の口座に振り込めない事情がある場合もあるでしょうから、必ず受給者名義の口座に振り込まなければならないというものではなさそうです。

 しかし、もしも受給者名義以外の口座に振り込む場合は、不正受給を疑われないためにも、なぜ、受給者名義以外の口座に振り込んだのか、婚姻費用としての支払はいくらなのか、などを客観的に説明できる資料(支払い明細、精算書等)を整えておいた方がよいと思われます。