自分よりも収入のある配偶者が家を出て行ってしまい、自分の収入だけでは生活が苦しい、あるいは子育てが大変、等でお困りの方、すぐに婚姻費用分担請求をしましょう。スピードが大事です。ではスピードが大事とはどのような意味でしょうか。
家庭裁判所は、審判時から過去に遡って婚姻費用分担の審判をすることができますが、いつまで遡るのかについては何個か説が分かれています。
その中の一つで実務上多く採用されているのが「請求時説」です。この請求時説とは、その名の通り、請求した時点から婚姻費用の支払い義務がある、と考える説です。
例えば、義務者が婚姻費用を支払わなくなった時から、権利者が義務者に対して何の請求もせず、「いつかまとめてもらえばいいや」と1年間放置してしまったとします。請求時説によると、この1年分の婚姻費用はもらえないことになってしまいます。本当に勿体ないことです。
ですので、婚姻費用がしはらわれなくなったら、すぐに家庭裁判所に婚姻費用分担調停の申立てを行う等して、明確に請求権を行使しましょう。
なお、婚姻費用分担の請求は、法的に婚姻関係が継続している限り、仮に婚姻関係が事実上破綻していたとしても、原則として認められるものなので、「自分も悪いところあるから貰えない」なんて思わずに直ちに請求しましょう。
弁護士 吉田公紀