こんにちは。先日、面白い判決が最高裁判所で出されました。
性同一性障害で女性から男性になった夫と、婚姻関係にある妻が、第三者との人工授精で授かった子供を嫡出子として戸籍に記載するよう求めた事件において、平成25年12月10日、最高裁判所第三小法廷は、子を夫婦の嫡出子として認める決定を出しました(平成25年(許)第5号戸籍訂正許可申立て却下審判に対する許可抗告事件)。
つまり、夫と子供の間には血縁がないことは明らかであるのに、法律上の親子関係を認めたわけです。
ところで、最高裁は平成19年3月23日、いわゆる向井亜紀さんの代理母出産事件において、妻の卵子と夫の精子を使い、代理母が出産した子供について、嫡出子とは認めない決定をしています。
こちらは、夫婦と子供の間の血縁関係(遺伝子上の親子関係)は明らかであるのに、法律上の親子関係を認めないという判断ということになります。
この二つの判決、対比すると非常に興味深いですね。
これまで、親子関係の成立は、原則として血縁関係を基礎にして成立すると言われていました。
しかし、この血縁関係説から見ると、上記二つの最高裁決定は全く説明できません。
二つの最高裁の決定を矛盾なく説明するとすれば、『子を誰が産んだか』つまり、血縁ではなく物理的な子宮を基準としているように見えます(子宮説!?)。
しかし、性同一性障害で苦しみ、性別適合手術を受けた元女性の男性は戸籍上嫡出子を持つことができるのに、子宮の摘出やその他の健康問題などで苦しみ、代理母出産を選択しなければ子どもを持つことができない女性は戸籍上の嫡出子を持つことができないなんて、あまり納得ができない結論という気がしませんか?
どちらの方も長い間苦しみ、生殖医療技術の発達によって自己の子を持つ喜びをやっと味わえたのだと思います。法制度の整備を早急に行う必要がある問題です。
弁護士 井上真理