最近、最高裁判所での大法廷で、嫡出子と非嫡出子との相続分についての規定である民法900条4号の規定に関する決定がなされました(最大決平成25年9月4日)。

 これに関連して、法改正などの議論がなされているようですが(三権分立について全く理解できていないような愚かな議論も存在しているようですが、それはさておき)、今回は、そもそも嫡出子と、それに関連した諸制度についてのご説明です。

1 嫡出子とは?

 「嫡出子」が何であるかは、民法に定めがありませんが、一般に、婚姻している父母間の子のことを嫡出子と呼んでいます。

 民法上は、772条において

「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫のこと推定する」(1項)

「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」(2項)

との定めがあるのみです。

 この規定からすると、例えば婚姻成立後200日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したとは推定されないことになります。

 この、「推定されない子」が非嫡出子なのかというと、そういうわけではありません。

 古い判例に、婚姻後200日以内に生まれた子について、認知手続を経ずに父母の嫡出子としての身分を有することを認めたものがあります(大連判昭15年1月23日民集19巻54頁)。このような民法の規定による推定を受けないけれど、婚姻関係にある2人の子のことを「推定されない嫡出子」といい、結局「嫡出子」として扱われるわけです。

 結局、嫡出子とは、婚姻中又は婚姻解消後300日以内に生まれた子をさすことになり、その中には、上記民法の規定により「推定を受ける嫡出子」と、「推定を受けない嫡出子」とが存在することになります。

2 推定を受けるか否かでの法的相違

 推定を受ける子であるのか否かによって、万が一、子が婚姻関係にある夫婦の子ではなかった場合に、父親が採りうる手続が異なります。

 推定を受ける嫡出子の場合には、嫡出否認の訴え(民法775条)という手続によって自らの子でないことを証明しなければなりません。何よりも、この訴えは夫が子の出生を知ったときから1年以内に提訴しなければなりません。子が1歳になる前に訴えを提起する場合というのは、子が生まれたときから、妻の浮気を疑っているような場合しか基本的には考えられないでしょう。

 ただし、例外的に、推定すること自体が不合理である場合、例えば夫が刑務所に収監されている間に子を懐胎した場合などは、後述の「推定を受けない嫡出子」と同様の手続で親子関係が存在しないことを確認できます。

 推定を受けない嫡出子である場合には、親子関係不存在確認の訴えという訴訟を提起することができます。この場合、一般的な民事訴訟なので、1年以内に提訴しなければならない等の規定は存在しません。

 上記の各区別が合理的であるか否かは議論のあるところですが、現行の法制度上はこのようになっています。

弁護士 水野太樹