内縁の夫が交通事故で亡くなった時、内縁の妻は、どうすればよいのでしょうか。

 法律上の妻であれば、死亡した夫の加害者に対する損害賠償請求権を相続することになるので、問題はないでしょう。

 内縁の妻には、相続権が認められてはいません。すると、内縁の妻は、内縁の夫の死を悲しむだけで、なんら権利主張できないのでしょうか。

 内縁の妻も実際には、法律上の妻と同様の生活をしており、その悲しみや生活への影響は、法律上の妻となんら変わらないでしょう。

 そこで、今回は、加害者に対して、内縁の妻でも請求できるものについて書いてみます。

 まず、内縁の妻も、内縁の夫に扶養されている点をとらえ、内縁の妻は、不要利益の侵害を理由に財産的損害の賠償を請求することが認められることがあります(大阪地判昭54・2・15等)。次に、法律上の妻に準ずるものとして、民法711条の類推適用により、慰謝料請求が認められることがあります(千葉地判昭38・7・19等)。

 もっとも、上記の請求が認められると、相続人との競合が発生することになります。前述のように、相続人は加害者に対して、損害賠償請求できることとの整合性です。

 裁判所の判断は、内縁の妻の不要利益を除いて相続人の請求を認めています(札幌高判昭56・2・25交通民集14・1・67 判タ452・156、最判平5・4・6民集47・6・4505)。