「離婚時年金分割制度」をご存知ですか?おそらく「年金分割」という言葉自体は聞いたことがあるのではないでしょうか?しかし、どのような制度で具体的にどのような手続きをすればよいのかは、なかなか分かりにくいところだと思います。そこで、今回から順を追って離婚時年金分割制度をとりあげたいと思います。第1回は、年金制度の概要について解説します。

 日本の年金制度は、国民年金(基礎年金)を基礎とした3階建ての構造をしています。すなわち、年金制度は、大別すると、①国民年金(基礎年金)、②被用者年金(厚生年金、共済年金)、③企業年金等に分けられます。

① 国民年金(基礎年金)

 1階部分の国民年金(基礎年金)の被保険者は、自営業者等の第1号被保険者、民間サラリーマンと公務員等の第2号被保険者、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者の3つに区分されます。

 基礎年金制度の導入(昭和60年)により、被扶養配偶者分を含む世帯単位で被用者本人に対して行われていた給付が、被用者本人と被扶養配偶者それぞれの年金に分化しました。これにより、被扶養配偶者は、離婚しても自分自身の基礎年金の支給を受けられるようになりました。つまり、基礎年金については、制度的に既に分割がされています。

② 被用者年金(厚生年金、共済年金)

 2階部分には、民間サラリーマンや公務員が加入する被用者年金(厚生年金、共済年金)があります。これは、基礎年金に上乗せする形で年金給付を行うもので、離婚時年金分割の対象となるのはこの部分です。

③ 企業年金等

 3階部分の中心となる企業年金は、企業が任意で設ける年金制度です。代表的なものに、厚生年金基金などがあります。

 わが国の年金制度の概要をご理解いただけたでしょうか?少し退屈だったかもしれませんね。でも離婚時年金分割制度を理解する最初の1歩ですので、記憶にとどめておいてください。

弁護士 石黒麻利子