国境を超えた人の往来が活発化し、多国間での人の交流が盛んである現代社会において、国際結婚というのも珍しい話ではありません。そして、国際結婚が珍しいものではなくなることは、国際離婚もまた珍しいものではなくなることにつながります。

 国際離婚(渉外離婚という呼称の方が一般的ですか)は、年々案件数が微増していく傾向にある様であり、国際結婚が一般化するにつれて誰にとっても身近なものとなっている印象もあります。

 渉外離婚の場合には、日本人同士の離婚では思いもつかない問題が出てくることがあり得ます。その中の一つとして、日本と大きく物価水準・所得水準の異なる国から来た配偶者につき、離婚後その者が母国へ帰国した場合、離婚に伴う各種金銭給付に当たっては、双方の国の物価水準・所得水準の違いが何か考慮されるのかという問題が考えられます。

 仙台高裁秋田支部平成8年1月29日判決(家裁月報48巻5号66頁)は、中国人妻に対する離婚慰謝料を扱った事案ですが、日本との間に物価水準・所得水準の開きがあることについては、「さほど重視すべきものではない。重視すれば、日本人妻の離婚のケースとの間で公平を欠くこととなる。」旨を述べています。これをどう評価するかは見解の分かれるところでしょうが、さしあたり物価水準・所得水準の差を全面的に反映させ、離婚に伴う金銭給付額に大幅な修正を加える結論には至りにくいのではないかと考えられます。

 なお、渉外離婚においては、事案処理のための準拠法をどこの法律にするかが大きな問題となります。上記裁判例は準拠法を日本法としており、準拠法が外国法の場合のケースには異なる結論があり得ることには注意が必要と考えられます。