皆様、こんにちは。

 前回、親が子供に対して有している権利義務についてお話しいたしました。その中で、親権をめぐる争いにも若干触れさせてもらいました。
 今回は親権者をめぐって争いとなった場合に、裁判所は主にどのような点を見るのか、どのような考え方を持って臨んでいるのか等を簡単に紹介いたします。

親権を争う場面

 離婚は協議離婚や調停等、様々な形でまとめることが可能ですが、白黒をはっきりとつける場面は裁判離婚の場面です。
 裁判上の離婚の場合、裁判所は夫婦のどちらか一方を親権者と定めます(民法819条2項)。裁判所は判断をするにあたって調査官と呼ばれる専門の担当者を配置させて手続きを進めるほど慎重に行います(人事訴訟法33条1項、同34条1項参照)。

どこをみるのか

 なかなか一言では言い表しにくいですが、よく言われるのは「子の福祉(もしくは利益)」です。
 つまり、お子さんの監護状況(お子さんと別居している場合には過去の監護状況や今後の監護方針)、すなわち、お子さんが現在どのような環境で育っているのか、育ってきたのか、あるいは育てていく方針なのかを見比べて父母のどちらがより良いのか判断することになります。
 より具体的にいいますと、父母それぞれの監護能力や意欲、経済的状況、片親になってしまうため監護補助者(例、助けてくれる親族)がいるか否か、住まいの環境、お子様との関わり方など、様々な面から裁判所は見ていきますし、親側もその点を意識してアピールを行う必要があるといえます。

どのように判断されるのか

(1) 母性優先の原則
 特に乳幼児の段階では、特段の事情がない限り母親に監護を委ねるべきであるという考え方です。実際、母親が小さなお子さんの面倒をみているケースでは、母親が親権者となる可能性が高いです。
 もっとも、母親だからといって絶対的に有利というわけではありません。上記の考え方はあくまで母親の方がお子様に対して細やかな監護が期待できるから、という考え方に基づいています。逆にいえば、母親的な役割も果たせる父親が登場したときには、各々がどれだけ手厚い監護をすることができるかを具体的に見比べて判断されることになります。

(2) 継続性の原則
 裁判上の争いになる前から現実にお子さんを監護している方が引き続き監護をするべきという考え方です。すなわち、お子さんと一緒に暮らしている方を有利に見られることになります。  もっとも、相手方から強引な連れ去りを図るなど、お子さんと一緒に暮らすようになった経緯の中で、違法と評価される態様だと、いくらその後の監護の状態が良好でも、必ずしも現状を認めてもらえるとは限りません。お子さんと別居に至っている場合には、上記3で紹介した判断要素に加え、別居の経緯が重要な事情となるのです。

(3) 子の意思の尊重
 これまでは親の適格性について説明してきましたが、お子さん自身の意思をきちんと聞かなければなりません。例えば、裁判所の調査官が家庭訪問等を行い、お子さんと1対1になって、どちらの親と暮らしていきたいかを尋ねてみることがあります。
 もちろん、年齢によって判断能力が異なりますし、個人差もありえますから、慎重な判断が必要です。言葉と本心が裏腹という場合も全く否定はできませんので、お子さんの気持ちだけで決めてしまうことはありません。

 以上、親権の判断における具体的な判断要素や考え方等の一部を紹介させていただきました。裁判所では調査官らが細かな事情に至るまで報告書にまとめ、裁判官へ報告し(人事訴訟法34条3項)、親権者を誰にすべきか方向性を定めていくことになります。
 離婚後もお子さんと一緒に暮らしていけるか否かの決め手は、法律家らしからぬ表現で恐縮ですが、どれだけ真心を込めて育ててきたかによるのでしょう。きちんと育てていれば、お子さんとの思い出や良いエピソード等が自然と出てきますし、お子さんに関わる品物等もしっかり保管されていることが多いです。
 あとは裁判所に対する見せ方の勝負となるでしょう。その点は私共がお手伝いさせていただきます。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。