皆様、こんにちは。

1 イントロ

 唐突ですが夫婦間で他方配偶者に慰謝料の支払いを求める場面は夫婦関係調整調停や訴訟において請求するのがオーソドックスかと思われます。

 他方で、慰謝料を請求するだけの調停を申し立てることも可能です。

 もっとも、慰謝料だけを争点とするとしても、話し合いで決着がつかないから調停となっているのですから、そう容易く解決するものとも思えません。

 それでは、慰謝料についての調停にはどのような意味が見いだせるのか考えてみたいと思います。

2 調停での進め方

 夫婦関係調整調停は離婚調停とも呼ばれることがあるように、主に離婚その他の条件を定めることを狙いとした調停と位置付けられております。ケースにもよりますが、当事者である夫婦が過去の経緯から慰謝料を請求したいという希望を出してくる可能性があります。

 その際、調停委員会は慰謝料を求める理由を簡単にでも聴き取るはずです。慰謝料のみを請求する調停においても最初にやることは同じで、申立人である夫婦の一方がどのような理由から慰謝料を請求したいのかを話してもらうことになります。

 調停は当事者双方の言い分を聴取しますので、一方の配偶者から言い分を他方配偶者に伝えると共に、その他方配偶者の言い分も聞いていくことになります。

 ただし、注意しなければならないのは調停委員会といっても大抵の場合、男女ペアの調停委員が話を聞くにとどまりますので、裁判官に詳しい事情を把握してもらうことはあまり期待できないでしょう。そのため、どちらかといえば、調停委員が当事者間の言い分を伝えあいながら落とし所を探っていくという流れになることが多いのではないでしょうか。

 もし、お互いの妥協点が見いだせそうであれば、慰謝料の金額やその支払い方法についての具体的な協議へと進んでいき、最終的な合意内容を裁判官が確認して調停が成立することになるでしょう。しかし、事実関係で争いが生じていたり、金額等でお互いの納得が得られそうになければ調停は不成立となって終了することになります。

3 私見

 調停の特徴は話し合いをベースとした手続であるという点です。

 それゆえ訴訟のように、お互いに証拠を提出して有利な事実を主張し合うといった敵対的な手法はあまりなじみににくい、すなわち調停成立の方向へ進めて行くには、必ずしも近道とは言い難い側面もあるように思われます。

 それでも当事者双方の話を聞くことになる調停委員には事情を良く知ってもらい良い印象を持ってもらうことが戦術上重要になることがあるので、訴訟とは違った角度での見せ方や説明の仕方の工夫が求められるのかもしれません。

 また、慰謝料の原因が一方配偶者による不貞行為のように、関係者が存在する場合、事実関係に概ね争いが内容なケースでは、その関係者(不貞行為の相手方など)を利害関係人として、調停に出席してもらい話し合いに加わってもらうという進め方は可能です。

 あまり大ごとにしたくないというような訴訟に抵抗感のある方や、本人間で直接話し合う機会がなかった(難しかった)のでとりあえず話し合いのテーブルを設けたい、と思う方には調停の方がニュアンスとしては希望に添える部分があるとは思います。ただし、上記のとおり一長一短がありますので、それを踏まえた事前の検討は必要となるでしょう。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。