皆様、こんにちは。

1 イントロ

 去る3月15日に日弁連が「『養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表』に対する意見書」(以下「意見書」といいます。)を発表しました。

 当法人の過去のブログ記事でも紹介させていただいていたかもしれませんが、養育費や婚姻費用の金額については、東京・大阪養育費等研究会がかつて発表した「簡易迅速な養育費の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」(判例タイムス1111号285頁)に記載の簡易算定方式・簡易算定表が普及している状況です。上記の意見書を拝見してみたところ、現在の養育費等の算定の在り方に疑義を投げかけるものでした。それでは、どのような点に疑問がもたれているのか、簡単にご紹介いたします。

2 意見の趣旨

 意見書の提案内容は主に次の3点です。

① 地域の実情、子供の成長発達を保証する視点等を盛り込んだ新たな算定方式の研究を行うこと
② 新たな方式が公表されるまで簡易算定方式・簡易算定表の運用は慎重にすること、特に、公租公課を可能な限り実額認定し、その他個別具体的な事情に応じて等別経費を控除しない等の修正を加えること
③ 簡易算定方式・簡易算定表の問題点について周知を図ること、です。

3 問題点

 意見書が新たな算定方式の研究を求めていることの背景には、現行の算定方式が夫婦相互の収入額に基づいて速やかに算定することが可能となっている反面、半ば機械的に決まってくるため最低生活水準に満たない世帯が出ていることが挙げられています。

 事案によっては離婚をきっかけに就学を断念するといった教育水準の低下やその他貧困状態をもたらす一因になっている指摘しており、実際、お客様の相談をうかがっている限りでも、算出された養育費や婚姻費用で暮らせるのか不安を覚えることはあります。

 機械的で生活水準に達しないと批判されるのは、簡易算定方式では収入が多い方の親を義務者とし、義務者の総収入から公租公課、職業費、特別経費を控除した金額を基礎収入と呼んで、そこから生活費指数を用いて算出している時点で相当の金額が控除されているからです。

 ここでいう職業費とは給与所得者の算定に用いられている概念ですが、主に被服費、交通費、通信費、交際費等を対象としています(研究会の資料によれば世帯平均で総収入に対して19~20%の支出となっているようです。)。生活費指数は親を100として0歳~14歳を55、15~19歳を90としています。この指数は生活保護法に定められている生活扶助基準を利用して定められており、親一人世帯における子のみの生活扶助額の割合としたようです。もっとも、14歳と15歳生活費指数がぐんと上がるのは、生活扶助額の平均値を取った際の母体が上記の年齢で分けられていたからのようで、それ以上の具体的な根拠はないようです。

4 実際に簡易算定方式を使ってみると夫婦間の収入額によっては実生活のために期待しているほどの金額に達しないことがあります。

 ただ、それでもいいからとにかく早くお金を払って欲しいという要求を重視すると、簡易算定方式であれば年間の総収入を見比べれば大体の金額が出てくるので、話は進めやすくなります。

 他方で、両親の生活の実態、特に義務者に該当する親の支出を具体的に吟味して決めるような丁寧な方式を取ろうとすると、お互いの細かな生活の支出が争点となって、材料を出しつくすまでに時間がかかってしまうおそれがあるでしょう。

 意見書では具体的な算定案までは提示されておらず、簡易算定方式そのもの使い方からして今後の検討が必要であるとしておりますが、全体的なコンセンサスを得るのには時間がかかるのかもしれません。

 幼いお子さんの幼稚園・保育園の月謝、学費等だけでも何とか親が助けるという格好を付けられる方がいいのではないか、と、つい感傷的になってしまいます。しかし、公立と私立が必要な金額が異なりますし、今通っているところが直ちに金額的に相当とはいえないこともありえますので、両親間の合意が得られなければ、一旦は養育費の中でやりくりすべきという結論にもそれなりの合理性があるといえます。

 一旦定着しかけた方法を変えるのは容易なことではないと改めて認識いたしました。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。