離婚するに当たり、子を養育監護していない親が、養育監護している親の元にいる子どもに会う権利を、面会交流権といいます。

 面会交流権の権利性は、親の権利とみる立場、子の権利とみる立場、親及び子の両方の権利である立場などがありますが、いずれの立場であっても、子の福祉が重視されることには争いがないと思われます。そうすると、子の福祉に反するという場合には、面会交流が制限される場合があるということになります。

 今回は、面会交流権が制限される場合についてお話ししたいと思います。

 事案についてご説明します。

 夫の酒癖に嫌気がさした妻が、2人の子を連れて実家に転居し、離婚調停を申し立てました。しかし、夫に離婚の意思がなかったため、調停が不成立となりました。その後、夫が、別居解消に至るまで子どもたちを自分が引き取って養育監護する、それが認められなければ毎週末と休暇中の一定期間の定期的な面会交流を認めよとの審判申立てがなされました。

 家庭裁判所は、夫の申立てを却下しました。これに対し、夫は、離婚成立後においてすら子に対する面会交流が認められる場合が多いのに、自分たちのように離婚原因がなく、不和の原因となった飲酒も控えている事情の下で、父親である夫に子どもとの面会交流を認めないとする審判は不当であると主張して、高等裁判所に抗告しました。

 これに対し、高裁は以下のような判断をしました(大阪高裁決定昭和55年9月10日)。

① 子どもたちは、新住居での生活にようやく慣れ、情緒的に安定し始めてきていること。

② 子どもたちは、父親である夫との同居生活中の父の乱暴な行為に対する恐怖感が消えず、父親との面会を避けるというよりもむしろ嫌悪していること。

③ 父母が離婚をめぐって鋭く対立した状態にあること。

④ ①から③の状況の下で仮に面会交流を認めるとすると、父親である夫にとっては子どもたちの成長を確かめ、愛情を注ぐ得難い機会となるであろうが、他方子どもたちに対し情緒面の安定に悪影響を及ぼし、また、この面会交流をめぐって父母間の感情的対立を激化させ、子どもたちのためにも目下最重点的に調停されなければならない夫婦間の懸案解決を遅らせる結果となること。

 以上の点を認定し、現在の段階では、子の福祉のために必要があるから、父親である夫との面会交流を認めないとするのが相当であると判断し、抗告を棄却しました。

 このように、原則的には面会交流が認められるといっても、子の福祉を重視して、面会交流が認められない場合があります。ただし、考慮要素は事案によって異なるため、事案ごとにどのポイントを重視するかをよく考える必要があります。