1 はじめに

 こんにちは、弁護士の伊藤です。

 前回は、2分間に1組が離婚している[1]現代の日本で、「みんなは、どんな理由で愛を終わらそう(離婚しよう)としているのか」について、統計を用いて分析しました。
 (前回の記事はこちら:離婚と愛の終わる理由(わけ)

 今回は、最も多くの人たちが、愛を終わらせたい(離婚したい)理由に挙げた【性格の不一致】にスポットライトを当てて、検討してみたいと思います。

2 【性格の不一致】と愛の終わり

⑴ 【性格の不一致】で離婚するには

 裁判離婚が認められるには、民法770条1項の要件を充たす必要がありますが、【性格の不一致】は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当する可能性があります。しかし、そのハードルは高い・・・前回ここまでお話しました。

 そこで、今回は、まず【性格の不一致】を理由とする離婚に立ちはだかるハードルについてみていきたいと思います。

⑵ 【性格の不一致】での離婚のハードルは、高い

 そもそも、単なる【性格の不一致】では、離婚が認められる可能性は殆どありません[2]

 【性格の不一致】を理由として離婚が認められる場合というのは、婚姻関係が、夫婦「双方の性格の不一致と愛情喪失とによって、深刻かつ治癒し難い程度に破綻し、婚姻の実をあげうる共同生活の回復はもはや望むことができ」[3]ないと認められるときです。

 しかも、裁判所は、たとえ夫婦生活が破綻の危機に瀕していたとしても、「双方の努力により円満な夫婦関係の修復が可能であれば」[4]、【性格の不一致】を理由とする離婚を認めていません。

 さらに、裁判所は、夫婦双方による努力のみに止まらず、「双方の子供達を中心とする周囲の者の協力、援助」までをも考慮に入れて、修復の可能性を探らせています[5]

 つまり、【性格の不一致】による離婚のハードルは、高いといえます。

⑶ その離婚のハードルを・・・

 それでも、「あんな根性のひん曲がった夫(妻)に、残りの生涯を捧げた挙句、同じ墓に入るなんて、考えられない!なんとしても、離婚がしたいっ!!」・・・そんなとき、どうすればよいのか。

 ここはひとつ発想を転換して、
 「ハードルを迂回する。」
 というのは、いかがでしょうか。

⑷ 「ハードルを迂回する。」

 思い返してみて下さい。

 夫(妻)と、なぜ離婚したい程に性格が合わないと考えるようになったのでしょう。そして、ふたりの間に隙間風が吹くようになってからは、どんな出来事があったでしょう。

 たとえば、食事を作ってもらえなかった、生活費をもらえなかった、病気で寝込んだときには看病もしてもらえなかった・・・

 そんなことは、ありませんでしたか。

 もし思い当たるなら、悪意の遺棄(民法770条1項2号)と構成することができます。

⑸ 実務の視点

 実務上、依頼者の方から、当初、もっぱら【性格の不一致】を理由として離婚をしたいというお話があった場合でも、詳しくお話を伺った上で、民法770条1項1号ないし4号に当たらないかを検討するのが一般です。

そして、民法770条1項1号ないし4号に当たるのであれば、これを離婚原因に加えます。

3 最後に

 離婚問題に限った話ではありませんが、誰しも自分が当事者になって、いわゆる頭に血が上った状態では、ひとりだけで自分の主張すべき言い分を整理することは難しいものです。

 さらに、個々の事実が持つ法的な意味を吟味することなどは、これまで法律とあまり縁のない生活を送ってこられた方にとっては、とても難しい作業だと思います。

 そんなときこそ、弁護士がお力になれるものと考えます。お気軽に法律事務所の扉を叩いてください。

 今回のお話は以上となります。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

[1] 厚生労働省「人口動態統計年報(平成22年度)」(統計表)第1表人口動態総覧。
[2] 東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会「離婚事件の実務」78頁など。
[3] 大阪高判昭和34年10月31日・判例時報215号25頁。
[4] 東京弁護士会法友全期会家族法研究会「離婚・離縁事件マニュアル 改訂版」101頁。
[5] 最判昭和38年6月7日・家庭裁判月報15巻8号55頁。

弁護士 伊藤蔵人